<新紙幣、新時代。>栄一翁の想い継ぐ~(1) 栗山英樹さん「渋沢は近くで生き続ける存在」
いつか「論語と野球」という本を執筆することが、ひとつの夢です。「道徳と金もうけ」という相反するものを、渋沢は論語でできると証明しています。野球も同じで、例えばチーム順位が最下位でも、個人成績が良ければ年俸は上がってしまう。一般社会ではありえない状況です。その時におごるのではなく、次は勝利のために何ができるのかを自然と考える。人格を含めて立派な野球人になってほしい。私の野球観は「論語で野球をやる」という思いです。技術を教える前に、まずは「ひとづくり」だと。渋沢は論語を用いて金もうけをしたことで、信用を生み成功の確率を上げました。より良い結果を出すために、「論語で野球をやろうぜ」と言い続けたいです。 私にとって渋沢栄一は、「先生」であり「師匠」です。渋沢だったらどう動くのかなと、ふと頭の中に浮かぶことがあります。過去の人物というよりは、近くで生き続けている存在です。渋沢の精神を、日本人が理解できる時代がようやくやってきました。「自分はどう生きていくのか」ということが、今後の人生に課されたテーマだと心に刻んでいます。決して褒められた人間ではないけど、60歳を超えたいま、渋沢栄一先生に恥じない生き方をしていきたいです。
(2024年7月3日 埼玉新聞発行「新紙幣、新時代。~栄一翁の思い継ぐ~」より全文掲載) ■くりやま・ひでき 1961年4月26日生まれ。東京都小平市出身。1984年ドラフト外でヤクルトスワローズ入団。89年ゴールデングラブ賞。90年引退。テレビ解説者等を経て、2012~21年まで北海道日本ハムファイターズ監督として指揮を執り、16年にはチームを日本一に導いた。21年野球日本代表(侍ジャパン)監督就任、23年WBCで優勝。24年から日本ハムのチーフ・ベースボール・オフィサー。 第2回は7月4日(木)、渋沢栄一記念財団相談役・渋沢雅英さんを配信予定です。 =埼玉新聞WEB版=