スティーブ・ジョブズの未亡人が支援する「気候テックの投資会社」
スティーブ・ジョブズの未亡人、ローレン・パウエル・ジョブズが創設した財団のエマーソン・コレクティブが支援する気候関連の投資会社、Elemental Impact(エレメンタル・インパクト)が1億ドル(約142億円)の資金を米政府から受け取った。ホノルルを拠点とする同社は、1000社以上の企業や個人から成るネットワークを通じて、追加の資金を調達し、気候テクノロジー分野のプロジェクトに投資する計画だ。 政府は、エレメンタルがこの1億ドルの資金を呼び水にして、民間から追加で7億ドル(約1000億円)を集めることを期待している。「当社の目標は、民間からの投資を引き込んで、気候変動と戦うプロジェクトへの投資を行うことだ」と、2009年に創業したエレメンタルの創業者兼CEO、ドーン・リッパートはフォーブスに語った。 同社は、これまで累計2億1000万ドル(約298億円)の資金を慈善団体や政府から受け取っており、そのうち8000万ドル(約114億円)以上を、160社の気候テクノロジー企業に投資してきた。エレメンタルはまた、スタートアップへの技術支援やコミュニティとの連携の支援も行っている。 同社は、2017年にエマーソン・コレクティブと提携し、パウエル・ジョブズを取締役会の議長に迎え入れた。リッパートはエマーソン・コレクティブの上級気候顧問を務めている。 エレメンタルは、新たな資金をエネルギーや交通、水、農業、産業などの分野に投資する計画だ。同社の既存の投資先には、今年初めに2億4400万ドル(約350億円)を調達した地熱エネルギー企業のFervo Energyや、希少な鉱物を精製およびリサイクルするNth Cycle、微生物から代替パーム油を製造するC16 Biosciencesなどの数多くの気候テクノロジーのスタートアップが含まれている。 今年6月にエレメンタルとボストン・コンサルティング・グループが発表した報告書によると、金利の高騰やインフレ、地政学的な問題などの逆風により、2023年の気候関連の資金調達額は40%近く減少した。 「気候テック企業は、化石燃料に対抗するために必要な資本を確保できていない。この問題を解決しないとテクノロジーが機能しているのに、資金が足りないためにスケールできない企業が続出する」とリッパートは述べている。 今回政府から調達した1億ドルは、バイデン政権のインフレ削減法の一環で環境保護庁が設立した270億ドル(約3兆8600億円)規模の温室効果ガス削減基金の一部だ。リッパートによると、エレメンタルは現在、投資候補となる企業のデューデリジェンスを行っているという。「気候変動の問題の解決にあたっては、迅速な投資が求められている」と彼女は語った。
Amy Feldman