壁面が剥がれ、水や土砂が流れ込む北薩トンネルの一部＝２６日、出水市高尾野（鹿児島県提供）

　北薩トンネルの土砂流入現場一帯は、掘削工事中に１時間当たり最大１２００トンの湧水が発生した難所だった。鹿児島県は全国初となる特殊な減水対策工事を実施し、完成にこぎ着けた。今回の被災原因はまだ不明だが、県の担当者は「当時の工法の検証を含め、どういった対応ができるか検討したい」としている。 【写真】北薩トンネルの断面図を見る

　被災現場は出水市側の入り口から約１．８キロ付近。花こう岩と四万十層群という異なる地層の境目にあり、２００９年９月に始まったトンネル掘削中に高濃度のヒ素を含む湧水が発生した場所と一致する。 　県や当時の記録によると、約４２億円を追加し、今回の被災現場を含む１００メートルの範囲で減水対策工事を実施。ダム建設の技術を応用して水の通り道となる地層の割れ目にセメントを注入して埋める工法や、水と反応して固まるウレタンの薬剤を注入する方法で湧水を１時間当たり５１０トンまで抑制した。 　いずれもトンネル工事では国内で初。ゼネコンの熊谷組などが施工した。１７年度の土木学会技術賞を受賞するなど業界で高い評価を得ていた。