クラウドファンディングとカブス108年ぶり悲願 全米に広がる新観戦術とは
またインディアンスファンのなかにも、寄付を募っている人がいる。その一人が、高校時代の恩師にワールドシリーズのチケットを渡したいという内容で、同窓生に向けて呼びかけていたもの。 「90年代半ばからストラザーズ高校に通っていた人はいますか。ケージ先生は、私たちの人生に大きな影響を与えてくれた人物です。先生はアメリカで最も素晴らしい教師の一人で、いつも全生徒に対して前向きなお手本であり続けてくれました。先生はずっとインディアンスファンでもあります。私たちは先生にワールドシリーズを観戦してもらい、感謝を表したいと思います」 こちらの寄付の目標額は2350ドル(約24万円)で9日間で101人から2560ドル(約26万円)を集めた。同窓生と思われる人からは、こんなコメントも寄せられていた。 「ここで呼びかけることは、在校生と多くの卒業生をひとつにできることで、とても素晴らしく心温まるものです。でも、ちょっと質問があるのですが、先生は私たちが集めたお金で買ったチケットを喜んで受け取ってくれるでしょうか。このサイトだと集まったお金から手数料も、払わないといけないのではないでしょうか?その分も計算していますか? 今からでもチケットは取れるのですか?」 寄付を集める呼びかけに賛同しながら、こういう疑問が沸くのもクラウドファンディングの特徴だ。 ただこれらの資金集めは、何かしらの支援者へのリターンはなく、ほとんどの場合、寄付だ。 そういうクラウドファンディングが成立する背景には、米国は日本に比べて寄付やチャリティ、社会貢献活動が、歴史的、文化的に根付いているという事情がある。 不特定多数から寄付を募るというよりも、寄付の呼びかけが、「いつも、みんなのために頑張ってくれている○○○○さんを野球に連れていきましょう」みたいなものが多く、普段からお世話になっている人、ボランティアとして頑張ってくれている人へ、「みんなでお金を集めて入場券をプレゼントしよう」という趣旨で、フェイスブックで募集を拡散するというパターンも目につく。 また低所得世帯の子どもは入場券の費用や保護者が付き添えないという理由でスポーツ観戦の機会が少ない社会情勢も背景にあり、スポーツ入場券を取り扱っている業者が、購入者が支払った一定額を低所得層の子どもたちのスポーツ観戦費用に使うことを表明している場合もある。 日本ではまだクラウドファンディングを利用しての野球観戦スタイルは広がっていないが、米国のような寄付型ではなく、代わりに現地でしか手に入らないグッズを買ってくるとか、観戦写真を送るとか、なんらかの魅力あるリターンがある購入型であれば、人気を集めることもあるのかもしれない。