食べ物の恨みは恐ろしい…エジプトで数十年ぶりにパン補助金削減、価格4倍に 千夜一夜
駐在するエジプトの首都カイロは猛暑に見舞われ、気温が40度に達する日もある。そんななか、市民をさらにうんざりさせるニュースが流れた。政府が貧困層を対象とするパンの補助金を削減すると発表し、6月1日から値段が4倍に跳ね上がったのだ。 パンはエジプト人の主食だ。ロシアのウクライナ侵略開始以降、両国に小麦を依存していたエジプトは大きな経済的打撃を受けている。侵略前、1ドル=15台で推移していた通貨エジプト・ポンドは50近くまで価値を下げ、インフレ率は年率30%超で推移している。 1億人超のエジプトの人口のうち、3分の2がパンの補助金の恩恵にあずかっているとされ、市民は、値上がりが物価高騰に追い打ちをかけると心配している。 カイロ在住の30代主婦は「商店のサンドイッチやレストランの料金も今後上がると思う。今月後半には大型連休があるが、家計が苦しいので家族旅行などの予定はない」と嘆いた。 食べ物の恨みは恐ろしい。サダト大統領時代の1977年には、政府がパンなどの補助金削減を表明し、デモやストが相次ぐ「パン蜂起」が起きた。街中は今のところ平穏だが、パンの補助金削減は数十年ぶりといわれ、政府が民衆の動向をつぶさに見守っているのは間違いないだろう。(佐藤貴生)