汚職や熟練度の欠陥…中国軍が抱える構造的課題を指摘 米国防総省年次報告書
【ワシントン=坂本一之】米国防総省は18日公表した中国の軍事動向に関する年次報告書で、中国軍の課題や構造的な問題を詳細に指摘した。 報告書は、2023年に起きた中国軍内部の汚職調査や幹部交代について「新たな波」と表現。同年7~12月にかけて「少なくとも15人の軍幹部と軍事産業幹部が解任された」と深刻な問題であると強調した。捜査対象などには装備開発プロジェクトを監督する人物が複数含まれており、習近平政権が進める軍の近代化を妨げた可能性を指摘した。 さらに報告書は、共産党が「軍への政治的統制を強化」する取り組みを推進していることも明記。「軍における政治的な忠誠や腐敗に対する習氏の懸念」への対応だと解説した。習政権は汚職対策や軍掌握に長期的に取り組むが、現状では軍の近代化が計画通り進まない可能性を浮き彫りにしている。 報告書はまた、中国軍が陸海空や宇宙、サイバー、電子戦などあらゆる領域で作戦を実施できるよう統合的な作戦能力を高めていると懸念を示した。一方、中国軍には指揮官の熟練度、長距離の兵站、市街戦などで「大きな欠陥がある」と指摘した。 中国軍は現在、米軍に対抗できるよう装備や部隊運用を改善し、統合的な作戦能力を強化している。ただ、米軍を上回る能力の構築にはさらなる時間を要する。 米国防総省高官は中国の経済成長に言及し、「軍に影響を及ぼす可能性がある」と話す。経済が悪化すれば、巨額の予算を必要とする軍の近代化は国にとって大きな負担となる。高性能化が進む最新兵器は単価が高く、維持も高額となる。 報告書は中国の軍事産業に関し、ミサイル開発で「トップクラスの生産国と同等だ」と評価しており、近代化を支える軍事産業の行方についても注視している。