能登への思い「山笠」に載せ博多を駆ける…消防団員の犠牲知り「町火消し」題材に、災禍払う願い込め
人形師「気持ち届けばうれしい」
中洲流は、能登半島地震の被災者へのエールを飾り山笠の見送り(裏)でも表現する。題材は、現在の石川県七尾市出身で安土桃山時代に活躍した絵師の長谷川等伯。被災した芸術家を励まそうと、担当する人形師の中村弘峰さん(38)が選んだ。
中村さんは2017年、第3回金沢・世界工芸トリエンナーレの公募展で優秀賞を受賞。人形師としての活躍に弾みを付けた。中村さんにとって石川県は「背中を押してくれた」場所で、公募展を通じて、多くの友人とも知り合えた。
ところが地震発生後、知人のSNSには、棚から多くの焼き物が落下し、散乱した様子などの写真があふれ、「作家の分身とも言える仕事場や作品がめちゃくちゃになっていて、想像を超えるショックを受けているはずだ。残念でならない」と感じた。さらに人づてで、廃業した芸術家も出たことを知ったという。
自分の出来ることで被災地を応援する一方で、芸術家としての自負も持つ。「人形師は、(飾り山笠の)題材を選ぶ感性も試される。山笠は、時代を表現しなければならない。今年がどういった年かのメッセージを込めたい」と意気込む。
博多祇園山笠には、多くの見物客が訪れる。「飾り山笠を見て、被災地のことを考えるきっかけにしてほしい。能登が取り上げられていることを被災者に知ってもらい、能登を思う博多の気持ちが届けばうれしい」。中村さんは、長谷川等伯の人形に思いを託している。