熊本市の大洋デパート火災で父亡くした遺族が防災士目指す…「発言力高めるには知識を身につけなければ」
104人が死亡した熊本市の大洋デパート火災で父を亡くした同市の原田真羊さん(53)が、火災の教訓を伝えようと防災士を目指している。市内で19、20日に開かれる日本最大級の防災イベントに、NPO法人の一員として参加し、遺族としての思いを発信する。(石原圭介) 【写真】楽しみながら防災について学んでほしいと話す竹内教授
原田さんは2歳だった1973年、両親と訪れた大洋デパートで火災に巻き込まれ、父・美芳さんが犠牲になった。当時の記憶はないが、女手一つで苦労した母・幸子さん(86)を見て育った。
2022年にあった五十回忌の慰霊祭で遺族代表を務めた。昨年は熊本市長に手紙で継続した訓練の必要性を訴え、市は発生日の11月29日を消防避難訓練の日と定めた。個人で活動を続ける中、4月、NPO法人「くまもと防災士会」の存在を知った。
会には防災士の資格がなくても入会でき、医師や消防士、主婦らが参加していた。原田さんは仕事で熊本城の観光案内をしていたことがあり、観光客らも参加する避難訓練を実施すべきだと考えていた。「個人ではなく、団体で訴えれば実現するかもしれない」と思い、5月に入会した。
九州豪雨の被災地を訪ね、防災士らの話を聞いた。「発言力を高めるには防災の知識を身につけなければ」と防災士になろうと考え、各地の防災講座などに足を運んだ。熊本市の防災士養成講座を12、13日に受講し、資格取得試験も受けた。
19、20日に開かれるイベントは「防災推進国民大会」(内閣府主催)で、防災運動に取り組む全国の団体が活動を紹介する。原田さんも「くまもと防災士会」のブースで語る予定だ。災害に分類されるのは主に大規模な火災だが、原田さんは「大規模でなくとも火災を災害と捉え、防火意識を高めてほしい」と話している。
「意識高めるきっかけに」
防災推進国民大会は2016年から各地で開かれ、九州では初めてとなる。世話人でNPO法人「くまもと防災士会」代表理事を務める熊本大の竹内裕希子教授(地域防災)は、「熊本地震や九州豪雨をもう一度思い起こし、防災意識を高めるきっかけにしてほしい」と話す。