シニア再婚希望の女性「お相手の財産、私がすべて相続できますか?」…確認すべき〈年金・相続〉の重要項目【FPが解説】
人生後半、配偶者と離別・死別する方は増加しており、それに伴ってシニア層の再婚が増えています。しかし、そこには未来の相続をはじめ、多くの課題・問題が生じてくるため、注意が必要です。今回は、女性の視点から確認します。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
増加する「シニア再婚」だが…女性側が確認すべき重要事項
生徒:私は今年で60歳になるのですが、5年前に夫が他界してからずっと一人暮らしです。子どももなく、老後をひとりで暮らすのは寂しいので、再婚できたらと考えているのですが…。 先生:シニア層の再婚は増えています。厚労省によれば、結婚した夫婦の4組に1組は再婚です。このうち50代以上の比率は夫が約3割、妻が約2割だと言われています。 生徒:高齢になってから結婚を考えるときの注意点を教えてください。 ◆公的年金(1)…再婚相手は厚生年金? それとも国民年金? 先生:結婚する前に、お相手の財産の状況を知っておきましょう。貯蓄や収入、借金、生命保険の加入状況、住まいは持ち家か賃貸かなどです。シニアになれば年金も重要です。国民年金と厚生年金の違いは大きいので、それなりの金額の年金収入を希望するのであれば、厚生年金に加入していた人を選んだほうがいいでしょう。 生徒:相手の方の公的年金の金額を知るにはどうしたらいいのでしょうか? 先生:すでに公的年金を受け取っていれば、その金額を直接聞くしかありません。受給開始前なら「ねんきん定期便」を見せてもらうことで、おおよその金額はわかります。注意したいのは、他界されたご主人の遺族厚生年金を受け取っている女性のケースです。毎月5万~10万円を受給しているはずですが、再婚すれば受給できなくなります。60歳であれば、中高齢寡婦加算として毎月5万円も上乗せされていますが、それも受給できなくなります。 生徒:そうなると、相手の公的年金に頼ることになりそうですね。 ◆公的年金(2)…前妻との年金分割の有無 先生:そうですね。相手が離婚していれば、年金分割をしているかどうかも確認しておきましょう。年金分割は婚姻期間の厚生年金を離婚後に夫婦で分け合う制度です。夫が妻に渡すことが多く、平均は月3万円ほどです。その分、離婚していた夫の年金の受給額は減ることになります。その一方で、年金分割を受けていた妻は、ほかの男性と再婚しても受け取ることができます。 生徒:それは事前に確認しておいたほうがいいですね。十分な公的年金がもらえなければ困ります。 先生:女性が65歳になるまでに再婚すれば、夫の老齢厚生年金に加給年金が上乗せされることがあります。加給年金は、厚生年金に加入していた人に、65歳未満の配偶者がいれば、年間約40万円を加算する制度です。 ◆健康保険…相手男性が会社員なら、被扶養者となり保険料もゼロに 生徒:健康保険はどうなるのでしょうか? 私は国民健康保険に加入しています。 先生:再婚相手の男性が会社勤めを続けていれば、夫の健康保険の被扶養者となって健康保険料がゼロになります。 生徒:あとは介護が心配です。年上の男性と再婚すれば、普通に考えれば、私が相手を介護することになるかと思います。ただ、私は身体が弱いので、私のほうが先に要介護になるかもしれません。 先生:持病がある場合は、事前に相手に伝えておかなければいけません。介護については、介護が必要になった場合にどのような介護を望むか、事前に話し合って決めておく必要がありますね。介護費用は、在宅介護で毎月5万円、有料老人ホームなどの施設介護となれば、毎月15万円くらいかかるでしょう。