「もしトラ」のESG業界への影響は軽微-英サステナ運用大手CEO
(ブルームバーグ): 英サステナブル運用大手インパクス・アセット・マネジメント創業者兼最高経営責任者(CEO)のイアン・シム氏は、11月に予定されている米大統領選について、仮に共和党のトランプ前大統領が勝利してもESG(環境・社会・企業統治)業界への影響は軽微になるとの見通しを示した。
都内でブルームバーグの取材に応じたシム氏は、ESGの概念は「クリーンエネルギーの重視」と「倫理的価値観が伴う投資」という二面性を持つと指摘。「大統領選で共和党が勝利すれば、米国のアセットオーナーに対して倫理的な投資を抑制する圧力が高まる可能性はあるが、クリーンエネルギーを選好する機運が損なわれるとは考えにくい」と話した。
太陽光や風力発電などのクリーンエネルギー産業は化石燃料よりも限界費用が低く、消費者には安価な手段となり得るとの見立てだ。
大統領選の行方はESG業界にとって最大の関心事の一つだ。トランプ氏は大統領に就任した2017年に、世界が脱炭素の道しるべとするパリ協定から脱退すると表明し、波紋を呼んだ。ESGは共和党が反対の姿勢を示すなど、政治的な色彩を帯びている実態もある。
シム氏は「共和党政権になった場合に備えてポートフォリオを調整する準備はある」としながらも、「クリーンエネルギーにおける産業革命」について懸念すべきことは何もないと強調した。
日本の移行戦略に理解
日本のトランジション(移行)戦略を巡っては、一定の理解を示した。日本は、一足飛びに脱炭素化を図るのではなく、既存施設を使いながら段階的に二酸化炭素(CO2)排出を削減する考え方を重視しているが、石炭にアンモニアを混ぜて燃焼させる技術には「石炭火力の延命」との批判もある。
「再生可能エネルギーが十分ではない中で、世界が化石燃料からすぐに脱却できるとは思わない。日本のエネルギー事情がユニークでチャレンジングであることを考えれば、化石燃料からの移行に一定の時間がかかることについては理解している」と述べた。