宇野昌磨「思わせぶりな感じは違うかなと」現役引退前の葛藤を明かす
【現役引退を決めた胸のうち】 ーー休養ではなく引退してプロスケーターになると決断したことも『ワンピース・オン・アイス』の経験が影響したのでしょうか? スケートは他のスポーツと比べても、競技から退いたあとも活躍する場があるというのはとても恵まれていることだなと思います。『ワンピース・オン・アイス』に出会っていなかったらたしかに......。 ーーたくさんあるきっかけのひとつではある、と。 この1~2年は、現役での自分のスケートというものに悩み......までいく時もあれば、いかない時もある(笑)。そういう気持ちで。ただ、やめるという選択が自分のなかでなかなか決心できなかったんですが、スケートが競技の場だけではないことをあらためて感じられたので、休養ではなく引退としようと。 それに休養と言ってしまうと期待させてしまうかなと思って。(現役)復帰することを。だから、僕の気持ち的にも引退のほうがしっくりくるというか、僕の今までの発言とかスケートに対する考え方からしても、思わせぶりな感じは違うかなと思いました。 ーー引退後の生活は今いかがですか? シーズンオフは現役の時もアイスショーは立て続けに出演していたんですが、今年が一番ショーは立て続けですね。スイス(のアイスショー)へ行ったり、『THE ICE』、『プリンスアイスワールド』などへの出演がずっと続きます。 10月以降、オンシーズンにどうなるかが楽しみです。自分が現役だったら試合に出ていたけれども、現役じゃないからこそ時間が空いて、どんな仕事をするのか、何をするのかは自分自身すごく興味があります。
【フィギュアスケーターはやっぱり表現者】 ーー昨年は現役選手としてのルフィでしたが、今年はプロスケーターとしてのルフィです。ひと味違うぞ、という部分はありますか? うーん、どうだろう。もちろん去年の『ワンピース・オン・アイス』の時も現役のつもりでやっていなかったので、その点では変わらないですね。ほかのショーでは現役のプログラムをやったりジャンプをしっかり入れたりするんですけど、こんなに競技から離れたショーは初めてだったので。 ーー競技とは切り離されたものとして取り組んでいたのですね。 そうですね。今年もリハーサルをやっていて、フィギュアスケートは本当にすばらしいスポーツだと思うんです。スケーターは氷の上で滑ることにみんな突出していますが、表現者としてどこに突出しているかというとすごく難しい。 (滑るプログラムでは)いろんなジャンルができるからこそ、ダンス、バレエなどそれぞれの得意な分野があって。そして今回のキャラクターを演じるというのも、フィギュアスケーターにとっては不慣れな方がけっこう多い。 でも、やっぱり表現者なんだなって去年思ったんです。1カ月という短い稽古期間で『ワンピース・オン・アイス』をしっかりつくることができた。新しいアイスショーとして成り立たせることができたのは、みんな本当に表現者だし、やっぱりスケーターってすごいんだなと思いました。 後編<ルフィ・宇野昌磨とビビ・本田真凜がリフト技に挑戦『ワンピース・オン・アイス』の見どころは?>を読む 【プロフィール】宇野昌磨 うの・しょうま プロフィギュアスケーター。1997年12月17日、愛知県生まれ。現役時代には、全日本選手権優勝6度、世界選手権連覇、2018年平昌五輪銀メダル、2022年北京五輪銅メダルなど華々しい成績を残す。2024年に現役引退し、現在はアイスショー出演などプロスケーターとして活躍している。
山本夢子●取材・文 text by Yamamoto Yumeko