「ありふれた教室」若手教師はなぜ学校で孤立したのか 教育学部生が考えた解決策
学校は社会の縮図だと、学校教育について学ぶ中で実感する。多様性も負の側面も内包するからこそ、学校はあらゆる理不尽や差異と根気強く向き合わなければならない場になる。そんな学校が、「ありふれた教室」では生徒にも教員にも不寛容な場所になってしまった。主人公のカーラは、理想の教師であろうとするほど、生徒や同僚、親の信用を失っていく。教員は学校という入り組んだ社会で、どうあるべきなのか。教育に関心を寄せる学生として気になった。 【動画】どうすれば良かったのか? 悪意なき悲劇 「ありふれた教室」予告編
盗難事件の犯人捜しが招いた危機
若手教師のカーラ(レオニー・ベネシュ)は仕事熱心で正義感も強く、生徒や同僚とも順調に信頼関係を築いていた。だが、盗難事件が頻発するなど、校内には不穏な空気が漂う。誘導尋問や授業中の抜き打ち検査など、生徒に対する学校の調査はどんどん強引になり、カーラの教え子が疑われる事態に発展する。独自に犯人を捜そうとしたカーラは、職員室にカメラを仕掛け、財布を残して席を外す。戻ってみると財布からお金がなくなり、上着を探る腕が映っていた。映像と同じ柄の服を着ていた職員を疑うものの、犯人扱いされた職員も黙ってはいない。決定的な証拠がないまま職員は学校から追いやられ、盗撮まがいのカーラの手法は批判される。カーラは保護者、生徒、同僚から疑いの目を向けられ、孤立無援状態に陥る。生徒たちの間にも動揺が広がっていく。ドイツ映画賞で作品賞などを受賞したほか、米アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされた、注目の作品だ。 盗難事件の犯人を捜すサスペンス調の物語だが、終始フォーカスが当たっているのは学校と教員のあり方のように感じた。教員にとって、教え子たちは仕事として接する人々であり、学校は所属する組織だ。一方で教員は、教室の子どもの特性、学級の特徴などを熟知し、カリキュラムや学習環境をつくる。教育学的には、教員は「ひとりひとりの学びが成立する」という目的の追求や、学習環境のコーディネーターとして位置付けられる。物語の舞台であるドイツも、制度の違いはあれ、考え方はおおむね一致しているだろう。