81歳のバイデン氏、記憶違いなど連発で高齢批判 専門家「良好なスーパーエイジャー」
米国では、半世紀以上も前から、年齢差別が人種や性別による差別と同じく禁じられている。そんな社会にあって、高齢批判を浴び続けている人物がいる。第46代大統領のジョー・バイデン氏(81)だ。11月に大統領選が間近に迫り、米国ではエイジズム(年齢差別)がにわかに注目されている。 【画像】ドジャースの選手たちから特別ユニフォームをプレゼントされるバイデン大統領
4人に3人が「(バイデン氏は)年取りすぎ」
バイデン大統領が記憶違いや言い間違えをするたび、SNSやメディアが取り上げる。3月下旬、メリーランド州ボルティモアの大橋が貨物船の激突で崩壊した事故について「電車や車で何度もあの橋を通った」と発言したが、橋は自動車専用で鉄道は通っていなかった。 大統領選に向けた同月の選挙集会では「私を米議会に送ってください」と支持者に要請。「独コール元首相と2021年に交わしたやりとり」を2月に回想した際は、実際の会話の相手はメルケル前首相だった。話し方や身のこなしも年齢と結びつけて話題になる。 米ニューヨーク・タイムズ紙とシエナ大が3月に発表した世論調査結果によると、「仕事をこなせる大統領になるには年を取りすぎているか」という質問に、回答者の4人に3人が「強く同意」「ある程度同意」と回答した。11月の大統領選で一騎打ちになるドナルド・トランプ前大統領(77)に比べ、高齢への懸念は31ポイントも高い。前回大統領選でバイデン大統領に投票した人の約2割も、2期目は職務を続けられないと考えている。 ただ、バイデン大統領は外交・内政にわたる日々の激務をこなし続け、深刻なミスは露呈していない。ホワイトハウスは2月、バイデン大統領の主治医が「健康で活動的で元気な81歳男性」と記した健康診断結果を公表し、2期目に向けて職務継続に問題がないことをアピールしたが、高齢への懸念はくすぶり続ける。
年齢差別が横行するアメリカ
バイデン大統領の年齢批判の背景について、ペンシルベニア大のマウロ・ギレン教授は「年齢差別がいまなお米国で横行している証拠」と指摘する。ミシガン大が2022年に公表した50~80歳の2035人を対象にした調査では、93%が「スマホやパソコンを使えない」といった偏見を受けたり、「価値や重要性のあることをしていない」と思われたりした、と回答した。 65%は、テレビやインターネットで「高齢者は魅力がない」と示唆する表現に触れたとし、45%はだれかから直接そのように感じさせられた、という。 「加齢に対する固定観念や偏見がエイジズムを助長しています。それらを変えるために、私たちができることはいくらでもある」。4月上旬、ワシントンで開催された「高齢化への見方を変えるサミット」で、年をとることを捉え直す全国センターのパトリシア・ダントニオ代表は呼びかけた。 米国老年学協会を事務局とするこのグループは、年齢差別の解消に向け、連邦政府や州政府に対策を呼びかけ、啓発活動を続ける。サミットでは、Z世代やミレニアル世代、ベビーブーマーなど、年齢が近い集団を同一視して扱いがちな米メディアのあり方も議論された。 「高齢世代の増加は『老人のTsunami(津波)』とおそろしい災害のように表現されることもありますが、『多くの米国人がより健康により長く生きるようになった』と肯定的に言い換えるべきです。『年寄り』『高齢の扶養家族』という表現もより包摂的なものに変えられます」とダントニオさんは説明した。