テクニカル分析が教えてくれる、値動きを適切に読む方法
アメリカの証券業界で20年以上にわたって活躍したプロトレーダーが、米国株のチャートの見方を平易に解説する。(最新のドル円相場は こちら ) ■株価が動くのは株価が原因? 今から11年前の話です。ネットフリックス( NFLX )は今日のようなストリーミング・サービスはなく、DVDが自宅へ郵送されてきました。当時を思い出して、エニス・タナー氏(RiskReversal.comエディター)は、こんなことを語っています。 「小売り大手のウォルマート( WMT )もDVDレンタルを開始するというニュースを聞いて、私はネットフリックス株を空売った。ネットフリックスは生存が難しくなったと思ったからだ」しかし、株価は短期的には下げましたが再び強い上昇となり、タナー氏の空売りは失敗に終わりました。この経験から同氏が学んだことは、「ニュースを読んだり、会社の経営状況を調べることは大切だが、最も重要なのは値動きだ」ということです。 単純な説明になりますが、タナー氏はこう述べています。 「株価は上昇、下降を繰り返す。なぜそうなるのだろうか?原因は株価だ」「株価が動くのは株価が原因だ」というふざけたような説明ですが、これは多くの投資家に心当たりがあることです。現に、このようなことを時々聞きます。「何をしている会社かはわからないが、株価が最近好調に上昇しているので買ってみた」 極端な言い方をすると、テクニカル・トレーダーがしていることも、これと同じことです。もちろん、そのときの雰囲気で売買を決めるのではなく、移動平均線やMACDなどの指標を使って値動きを適切に読み取ろうと試みます。 ■値動きの強さを適切に読み取る 例として、テスラ( TSLA )の日足チャートを見てみましょう。 入れた3つの指標の設定値は一般的なものです。 ・指数平滑移動平均線(EMA):200 ・ストキャスティクス:14、3、3 ・MACD:12、26、98月5日に底を打って以来、株価は約40%の上昇となり、9月の下旬にレジスタンスゾーン(A)に達しました。この時点での作戦は2つあります。 1:レジスタンスゾーン突破での買い 2:レジスタンスゾーンの突破に難航するようなら空売り結果は2番目のシナリオとなりました。買われすぎゾーンで推移していたストキャスティクスは10月2日(1)に80を割り、売りシグナルが発せられました。そしてその翌日(2)、MACDもデッドクロスして売りシグナルです。 なぜMACDとストキャスティクスの2つを使うのでしょうか? その理由は、3と4の部分を見ていただくとわかります。 買われすぎだったストキャスティクスが、売りシグナルとなる80を下回ったのは7月12日でした(3)。そして、MACDからデッドクロスの売りシグナルが発せられたのは7月19日です(4)。 2本の矢印でわかりますが、ストキャスティクスが80を割った後、株価はすぐに下げず、下降に勢いがついたのはMACDのデッドクロス後です。 それならMACDだけ使えば良いのではという意見もあると思いますが、動きが速いストキャスティクスは警報として役立ちます。さらに、手仕舞いのタイミングはストキャスティクスの方がMACDより役立ちます。 重要なことは、MACDとストキャスティクスが同じ方向に動いているときは、値動きには強さがあるということです。 ■買い出動に必要な2つのこと 出来高の確認も重要です。 AとBを見てください。6月下旬から7月初旬にかけての上昇では、出来高も大きく増え、買い圧力の強さが示されていました。しかし、9月の場合は出来高が増えませんでした。 株価はレジスタンスゾーンに向かって進みましたが(C)、出来高はやや下げ方向となり(D)、前回のような積極的な買いではありませんでした。最後に、現在の様子を見てみましょう。 9月30日に高値をつけて以来、約20%の下落という冴えない状態ですが、テスラは10月11日の取引を200日指数平滑移動平均線のすぐ上で終了となりました(A)。 言い換えると、この移動平均線がサポートになった可能性がありますから、株価はそろそろ反発することが考えられます。 以上をまとめると、買い出動には次の2つが必要です。 ・ストキャスティクス(B)がゴールデンクロスして20を上回ること。 ・MACD(C)にゴールデンクロスが起きること。 鎌田 傳(かまだ・つたえ)/カリフォルニア州ロサンゼルス在住の専業投資家。高校卒業後に渡米。大学卒業後、1988年にカリフォルニアのベンチャーキャピタルに入社。ユニオンバンクの証券部や投資情報会社「TradingMarkets.com」のマーケットアナリストなどを経て現在に至る。著書に『 米国株チャート最強の教科書 』(SBクリエイティブ)。「T.Kamada」として情報発信するX(旧Twitter)( @Kamada3 )や ブログ のファンも多い。好きな映画は『フィールド・オブ・ドリームス』。 ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
鎌田 傳