今、再考すべき未承認国家問題――国家中心主義的国際秩序の「グレーな存在」
ニューヨークで行われた、台湾の国連再加盟を求めるデモ。2018年 (C)lev radin / Shutterstock.com
昨年2月から継続している ロシアのウクライナ侵略 、そしてこの10月からの イスラエルとイスラム武装組織ハマスの戦闘 に世界が心を痛めている。それらに加え、今年9月には1日の戦闘で、一つの未(非)承認国家[unrecognized states]が消滅した。旧ソ連のアゼルバイジャンに存在していた、アルメニア系住民が統治する「 ナゴルノ・カラバフ共和国(アルメニア語ではアルツァフ共和国) 」である。 未承認国家とは、ごく簡単に説明すれば、国家の体裁を整えていながらも、諸外国から国家として承認されていない政治構成体である。国家が主権国家としてやっていくためには、国家承認を受ける必要がある。しかし、国家承認を受けられない限り、その地は無法地帯となってしまう(未承認国家についての詳細は拙著『 未承認国家と覇権なき世界 』2014年、NHK出版を参照されたい)。 ナゴルノ・カラバフ(「ナゴルノ」は「山岳地帯の」という意味であり、「カラバフ」は「黒い庭」という意味である。近年、アゼルバイジャンでは、形容詞を除き「カラバフ」と称するのが一般的であり、以後、本稿では「カラバフ」と記載する)は、アゼルバイジャン共和国内に位置するが、アルメニア系住民が多い地域だったため、ソ連時代は自治州であった。ソ連末期に分離独立運動(当初はアルメニアへの移管、やがて独立を目指す方向に転換)が起こり、アゼルバイジャン人とアルメニア人の間の相互の民族浄化から紛争へ、そしてソ連解体後はアゼルバイジャンとアルメニアの戦争に発展した。
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廣瀬陽子