『ブギウギ』中村倫也がサプライズ登場! 趣里&三浦獠太とコントさながらのやりとりも
最終回まで、残すところあと2週となったNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。第117話では、中村倫也が「丸の内テレビ」のディレクター・沼袋勉役で事前告知なしのサプライズ出演を果たし、話題をかっさらった。 【写真】股野(森永悠希)と礼子(蒼井優)の娘だった水城(吉柳咲良) 中村が朝ドラに出演するのは、2018年度前期放送の『半分、青い。』以来およそ4年ぶり。同作で演じたのは、ヒロインの鈴愛(永野芽郁)が漫画家を目指して上京した直後に出会い、恋に落ちる“マアくん”こと朝井正人だ。中村が作り出す、人を寄せ付けるわりに掴みどころのないふわっとした雰囲気が女性視聴者を虜に。その後、『凪のお暇』(TBS系)や『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)でも顕著に現れたオムファタール=魔性の男としてのイメージを確立させた。だが、今回は全く異なる役柄に挑戦している。 沼袋はスズ子(趣里)が大トリを飾る大晦日恒例の番組『オールスター男女歌合戦』を担当するディレクター。見た目も中身も古いタイプの業界人で、打ち合わせに現れるなり「ご無沙汰、音沙汰、色恋沙汰はもうたくさん!」と、春の陽気を吹き飛ばすようなダジャレを一発かます。 そんな沼袋の提案で、その年の歌合戦ではスズ子の前に若手の有望株である水城アユミ(吉柳咲良)が歌うことに。水城の人気で世間では「スズ子の時代は終わり」という声が上がっているだけにマネージャーのタケシ(三浦獠太)は難色を示す。スズ子も不安げだが、「天狗になった若手の鼻をベテランがへし折る。バキバキにへし折っていいから」「ベテランの意地っての? そういうのが見たいんだな!」と強引に押し切る沼袋。軽薄だが、有無を言わさぬ大物っぷりにカメレオン俳優・中村倫也の真骨頂を見た。ちなみに中村は趣里、三浦と同じトップコート所属で、それぞれ共演経験もある。わずかな時間ではあるが、気心が知れた空気感が生み出すコントさながらのやりとりも見応えがあった。 さらに今回はもう一つサプライズが。スズ子が大阪時代に所属していた梅丸少女歌劇団(USK)のピアニスト・股野(森永悠希)が再登場となった。ストライキ騒動後に退団し、オーケストラを目指していた彼は、かつて失恋した礼子(蒼井優)と再会。泣き落としのようなプロポーズを経て結婚し、子供をもうけたが、出産後まもなく持病が悪化した礼子と死別した。 以来、スズ子は20年近く股野に会っていなかったが、まさかのテレビ局で再会を果たす。目を見張るのは、森永の“老い”の演技だ。若い頃の青々しさは消え、「ほんま立派になったねぇ」と目を細める仕草が、彼が男手一つで子供を育ててきた長年の苦労を想像させる。そして驚くことに、その子供はあの水城だった。股野は娘である水城のマネージャーとしてテレビ局に来ていたのだ。 「私、福来先生の大ファンです」とスズ子の目をまっすぐ見つめる水城は、たしかに凛としていて意志の強そうな雰囲気が礼子によく似ている。スズ子にとって、たゆまぬ努力でUSKのトップスターとして君臨していた礼子は永遠の憧れであり、ステージに立つ人間としての大事な精神を教えてくれた人。そんな礼子の娘が自分に引導を渡すかも知れない存在として目の前に立っている。正直、こうして水城と対面するまで、スズ子からは焦りみたいなものは感じられず、現状に甘んじているようにも見えた。そんな中で礼子の面影を宿した水城に尊敬の目を向けられ、スズ子は改めて「どうして踊るの?」と問いかけられたような気がしたのではないだろうか。 水城のモデルだが、母親がマネージャーを担当していた美空ひばり、レビュー一座・東京少女歌劇出身の女優・谷崎歳子を母親に持つ江利チエミの名前がSNSでは上がっている。いずれにせよオリジナル要素は強いが、どちらかといえば、スズ子のモデル・笠置シヅ子と1956年の『NHK紅白歌合戦』で名を連ねている江利のイメージが強い。この年を最後に笠置は紅白から退き、翌年に歌手廃業を宣言している。史実に沿えば、おそらく最後の勇姿となるであろう水城との新旧対決はいかに。
苫とり子