『ぎぼむす』麦田と亜希子の“縁”が生んだ奇跡 ギャップ溢れる佐藤健の愛しさに心が温まる
佐藤健の演技の振り幅の広さに驚愕するだけでなく、過去に演じてきたどの役ともギャップがありすぎる麦田店長の愛しさに心が温まる。ドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)の完結編となる『義母と娘のブルースFINAL2024年謹賀新年スペシャル』が放送された。 【写真】披露宴の会場で亜希子(綾瀬はるか)に迫る麦田(佐藤健) 『ぎぼむす』と呼ばれて愛される本作は、2018年7月期の連続ドラマとしてスタート。謹賀新年スペシャルとして、2020年1月2日、2022年1月2日に放送され、連続ドラマの開始からは約5年半の歳月が流れている。 主人公の亜希子(綾瀬はるか)は有能で若くして部長になり、仕事一筋の生活を送っていたが、宮本良一(竹野内豊)と結婚。みゆき(上白石萌歌)の義母となり、慣れない家事や子育てに奔走する。今回の3回目となる謹賀新年スペシャルでは、大学卒業を目前にしたみゆきが就職活動をしていないことに亜希子が気づくところから物語は始まった。 「ベーカリー麦田のバイトのままでいい」というみゆきに、就職とは何かをレクチャーし、全面的にみゆきの就職活動を後押しする亜希子。応援してくれる亜希子に素直に従うものの、みゆきにそこまでの必死さはなく、「ベーカリー麦田の正社員になる」と言い出しては亜希子を困惑させる。ベーカリー麦田の居心地の良さ、将来への安心感は、麦田店長のポジティブな言動の賜物としか言いようがない。 亜希子とみゆきにとって麦田は奇跡(時には波乱)を巻き起こす不思議な存在で、連続ドラマのときは謎の人物として登場していた。第1話ではバイク便のライダー、第2話では花屋、第3話はタクシー運転手、第5話と第6話は葬儀屋の仕事をしていて、職を転々とするフーテンのダメ男だった麦田。良一が亡くなったときに葬儀屋に勤めていて、亜希子とみゆきの涙を見て、「親孝行しよう。自分はこのままじゃダメだ」と父のパン屋を継ぐ決意をしたのだ。 今回は隙あらば亜希子にプロポーズして、軽く受け流されていたけれど、ベーカリー麦田が繁盛したのは、亜希子のビジネスセンスと麦田店長の熱い思いが実を結んだからで、それを人は縁と呼ぶだろう。 ちなみに本作でパン職人として生地を編んだり、食パンを作ったりするコツなど、佐藤健の覚えは早く器用だったと絶賛されている。TBSテレビ60周年特別企画 日曜劇場『天皇の料理番』で主人公の秋山篤蔵を演じたときは料理学校に通い料理の基本を学んでいたという。実際、手元の撮影も自分でこなし、その見事な包丁さばきを披露した。そして、この役のために髪を切り、坊主頭で撮影に挑んでいる。器用な人というだけでなく、演じるための努力も覚悟もできる人なのだ。 映画『るろうに剣心』シリーズでは、主人公・緋村剣心役の迫力ある華麗なアクションで海外のファンの心も鷲掴みにした。心を鷲掴みといえば、ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)で演じたドSなエリート医師・天堂浬役にハマった人は数知れず。ドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS系)の鳥野直木役のクールで切ない表情も印象的だったが、ラブストーリーで大人の男の色気を感じさせるほど、真逆の方向に振り切れた『ぎぼむす』の麦田のようなおバカなキャラがよりインパクトを与えるという効果もあるのかもしれない。 本作の制作記者会見で竹野内豊が「佐藤健くんの現場に佇んでる姿と麦田のギャップがすごい」と言っていたが、佐藤健自身も「気合を入れて麦田になっている」と発言していた。「カメレオン俳優」という言葉があるが、佐藤健もコミカルな役もシリアスな役も自由自在に演じ分ける才能あふれるカメレオン俳優の一人である。
池沢奈々見