持ち味を引き出して生かす 大阪勧業展で見つけた個性派商品
大阪生まれの紙製ドラム缶アート誕生の予感
ブッシュマン(大阪市)のブースを彩るのは、純国産の紙製ドラム缶「まいどらむ」。元々重要部品など入れて運ぶ容器として使用されていた。同社が無地の側面部分をビジュアルスペースとして活用することをひらめき、「まいどらむ」と名付けて市販に乗り出す。地味で堅実な業務用資材が、可能性を秘めたアートメディアに生まれ変わった瞬間だ。 高さ30.5センチ、直径28.5センチで、子どもにも運べる軽さ。大人が座っても、重さ20キロから30キロのものを収納しても大丈夫だ。 七五三、入園・入学、ウエディング、誕生日、ペット。思い出の写真があれば、1個からでもオリジナル作品を発注できる。新たなPRツールとして活用する企業も増えてきた。寺院に納品した作品は、黒地に金の文様で荘厳さが漂う。 広告制作で実績を築いてきた同社のデザイナーがデザインを担当するため、顧客の要望にきめこまかく応えることができる。絵巻物の世界にもつながる円柱型スペースの特色を、いかに生かし切るか。まいどらむアートの表現力を競い合う時代が訪れるかもしれない。
世界に1本だけの手作り木製万年筆
ケースに手作りの万年筆やボールペンが並ぶ。軸が木製で、ベテラン木工職人平井守さんの作品だ。平井さんは大阪市生野区内に工房「平井木工挽物所」を構える。筆者にとって、地元の商店街で昨秋開かれた職人作家作品展以来の再会だ。万年筆の木目の美しさ、木肌の手ざわり、平井さんの包み込むような笑顔にふれると、心が安らぐ。 平井さんの得意技は伝統的な木工ろくろ技術。多様な注文仕事をこなしながら、マイペースで万年筆作りに打ち込んできた。サクラ、ツバキ、シタク、コクタン。さまざまな軸材と向かい合い、本来の色合いや風合いを生かす。自身でも予測できない美しさが立ち現われてくる楽しみもあるという。世界で1本だけの万年筆だ。 黙々とろくろに向かってきたが、確かな職人技への評価が高まり、伝統工芸展への参加やメディアの取材が相次ぐ。平井さんは「ふたりの息子が仕事を手伝うことになった。一から教えるのがたいへん」と嘆いてみせながらも、笑みが浮かぶ。日本人の木に対する愛着は強い。多くの伝統工芸分野で後継者難が指摘される中、平井流木製万年筆の技術は次世代へ受け継がれていくことになりそうだ。 個性派コーヒー、紙製ドラム缶、手作り木製万年筆。ジャンルは異なるものの、商品の持ち味を引き出して生かし、人の心を豊かにして贈り物に適している点が通じ合う。これからのビジネス戦略のヒントになるのではないか。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)