大阪・千日前線はスズムシ線? 虫の音響き秋漂わせ人気
大阪・千日前線はスズムシ線? 虫の音響き秋漂わせ人気 THEPAGE大阪
大阪・ミナミで地下鉄日本橋駅のホームに入ると、どこからか涼しげな虫の音が聞こえてきた。見回すと改札近くに虫かごが置いてある。説明文によると、鳴いているのは駅職員が育てたスズムシだという。都心の地下鉄構内で、リーンリンリン。風流な駅職員氏に話が聞きたいと翌日、市交通局広報に連絡を入れると、さっそく駅職員氏から「お待ちしています」と返事がきた。しかし、指定された場所は日本橋駅ではなく、北巽駅だった。ナゾに誘われるようにして、千日前線に乗り込んだ。
千日前線7駅でスズムシたちの合奏会
スズムシ育ての親は北巽駅にいた。運輸助役の西木昭伸さんだ。西木さんは一昨年、知人からスズムシを譲り受け自宅で世話したところ、昨年、卵がふ化し、初夏には成虫に育った。 「地下鉄空間でも季節を感じてもらおうと北巽駅構内で展示し、乗客の皆さまから好評を得ました。来年もぜひ展示をとの声に後押しされて、スズムシの世話を続けました」(西木さん) 熱心な世話が実り、今年は昨年に比べて多くの成虫が育った。西木さんが勤務する北巽駅構内だけの展示ではもったいない。 「顧客サービス強化策の一環として、日本橋管区の各駅にもスズムシをおすそ分けして、より多くの乗客を皆さんに、スズムシの鳴き声を楽しんでもらうことが決まりました」(西木さん) 記者が出会った日本橋駅のスズムシは、昨年北巽駅で鳴いていたスズムシの子どもたちだったわけだ。今年の秋、スズムシがいるのは、北巽、日本橋に加え、鶴橋、今里、新深江、小路、南巽。谷町九丁目駅を除く千日前線東部の7駅だ。
「改札の 鈴虫鳴くや 駅の顔」
かわいいスズムシたちを各駅へ送り出す際、西木さんは飼育マニュアルを作成して駅職員たちに配布。キュウリ、ナス、かつお節などのえさやりや、霧吹きでの水やりなど、日々の飼育管理は駅職員たちが自発的活動で支えている。 「虫は苦手なんやけどなあと、最初は戸惑い気味だった駅職員も、世話を焼くうちに愛情がわいてくる。今ではエサの野菜を調達するなど、積極的に協力してくれます」(西木さん) 日本橋駅のスズムシ展示コーナーには、俳句が添えられている。 「改札の 鈴虫鳴くや 駅の顔」 駅構内の清掃業務を請け負う民間会社スタッフの力作だという。