『君が心をくれたから』朝野家の明るさが救いに 作品のトーンを変える出口夏希&遠藤憲一
雨(永野芽郁)と太陽(山田裕貴)の試練はまだ始まったばかり。互いを想い合う2人だが、運命はそう簡単に結びつけてはくれないのだ。『君が心をくれたから』(フジテレビ系)はいよいよ第4話の放送を迎える。恋模様はもちろん、それぞれの家族の物語も描かれる本作では、恋と限らず様々な愛を感じることができる。中でも、第2話を中心に描かれた太陽の家族のエピソードは印象的だった。全員の名前に“陽”が入る朝野家が、本作においてどのような役割を担っているのかを考えてみたい。 【写真】『君が心をくれたから』山田裕貴インタビューカット 太陽の実家は代々続く老舗煙火店「朝野煙火工業」、いわゆる花火を作る仕事をしている。太陽の父の陽平(遠藤憲一)はその当主であり、息子の太陽を一人前の花火師に育てるべく奮闘中。太陽の妹の春陽(出口夏希)は、明るく陽気な性格で、ストレートな言葉選びが印象的なキャラクターだ。兄妹は仲がよく、父も不器用ながら一生懸命に太陽と接している。だが第2話では、そんな朝野家の思わぬ秘密も明かされた。 実は太陽の母親が亡くなったときの火事を引き起こしたのは、陽平ではなく太陽だったのだ。だが陽平は太陽が苦しむことがないよう願っていた。幼い太陽に火事の記憶がないのをいいことに罪をかぶり、自分が火事を起こしたことにして太陽の母の写真を全て燃やす。母親の痛ましい事故と太陽を守るための苦しい決断に心が張り裂けそうなシーンが続いたが、朝野家が涙しながらもお互いを思い合う姿からは大きな家族愛と強い絆がうかがえた。 そして朝野家のキャラクターの魅力を引き出すのが、遠藤憲一と出口夏希の味のある芝居だろう。遠藤は粋な金髪姿で花火師の陽平を演じ、渋い魅力で「朝野煙火工業」を引っ張る。無骨で不器用だが、ニカっと笑う笑顔からは息子への愛がひしひしと伝わってくるのだ。なんとか太陽が立派な花火師になれるようにと日々太陽を指導するが、この思いの裏には亡くなった太陽の母との約束も込められている。実は太陽が夢を追いかける姿は本作のキーともなる重要なパートであることから、それを支える父の姿はこの先も欠かせないシーンとなりそうだ。 一方の出口演じる春陽も、太陽にとって大切な存在だ。普段の春陽は太陽に対して遠慮のない物言いをするが、実は誰よりも兄を応援している。心優しき妹は、第3話で太陽が雨に気持ちを伝えようとする時も背中を押していた。火事で母を失ったせいで、その顔さえ知らないが、春陽は太陽を責める素振りを見せることもない。この春陽のキャラクターに、出口の明るく華やかな笑顔やテンポの良い芝居が重なることで、沈んでしまいがちな作品のトーンをパッと明るくしてくれているように感じた。 第3話では陽平が病院に運ばれる緊急事態もありながら大事には至らなかった。そんなお茶目なエピソードもはさみつつ、朝野家が集まるシーンはどこかカラッと明るいムードが漂う。これから雨はどんどん五感の残りを失い、太陽はそんな雨と対峙することになる。そこで、朝野家の明るさが救いとなり、雨と太陽を支えてくれるのではないだろうか。
Nana Numoto