君は「絶対」に0点ではない…自分を見るだけでは気付けない!君の「”57点”の素晴らしい長所」
いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行した。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。 『君はどう生きるか』連載第37回 『「君は0点?」「あの人は100点…?」そんなバカな…自己肯定感の低い若者に知ってほしい「人生79点の考え方」』より続く
君は素晴らしい
たまに、ひどい親で、例えばテストで100点しか認めない人もいます。常に100点取れれば素敵なのでしょう。 でも、それを人生の目標にして、90点とか85点では意味がないと決めると、とても苦しい人生になるだろうと思います。命令する親は平気でも、子供は間違いなく悲鳴を上げると思うのです。 で、自信がない人に聞くけど、自分をほめることは何もない?「0か100か」の質問じゃないよ。 君は毎日、朝、起きて学校に行ってる?それは素晴らしい。1ヵ月に1回ぐらいしか遅刻しない?それは素晴らしい。忘れ物は1週間に2回ぐらい?それは素晴らしい。英単語を忘れても好きなアニメのキャラクターの名前は全部覚えている?それは素晴らしい。 学校には行ってないけれど、自分なりの勉強はしている?それは素晴らしい。1ヵ月で本を3冊読んだ?それは素晴らしい。親を手伝って、ゴミ袋を外に出した?それは素晴らしい。
「相対的な保証」を得るためには
皮肉で言ってるわけでも、バカにしているわけでもないよ。 君には、君が気付いてない素晴らしい所が間違いなくあるんだ。15点か38点か57点の良さがあるんだ。絶対に0点ではないんだ(普段、ぼくがめったに使わない「絶対」という言葉をここでは使うよ)。 他の人がやってなくて、君がやっている素晴らしいことがある。顔を洗うのだって、歯をみがくのだって、服を着替えることだって、素晴らしいことだ。だって、やってない人もいるんだから。 友だちの心配をする君は素晴らしい。親に申し訳ないなあと思う君は素晴らしい。毒親から一刻も早く逃げだそうと計画する君は素晴らしい。 君には素晴らしい長所がある。それは、他の人や他のことをじっくり見ることで気付くんだ。 繰り返すよ。自分の長所に気付かないのも、不安でたまらなくなるのも、自信がぜんぜん持てないのも、すべて、自分しか見てないからなんだ。そして「0か100か」の考え方に縛られているからなんだ。 でも、他の人や他のことを見つめることで、「相対的な保証」が得られる。間違いないから。
鴻上 尚史(・作家・演出家)