【本城雅人コラム】急な雨に思い出した2年前の凱旋門賞…「土砂降りのロンシャン」にいた岡田牧雄さんの負けん気
◇中央競馬コラム「ぱかぱか日和」本城雅人 ◇23日 第65回宝塚記念(G1・京都・芝2200メートル) ◆つば九郎、宝塚記念を予想【写真】 レースに合わせて、急に強い雨が降り出した。私は2年前、ドウデュース、タイトルホルダーらが出走した凱旋門賞を思い出し、嫌な予感しかしなかった。あの日は馬場の急激な変化に日本馬は戸惑った。そういう意味ではドウデュースには不運だった。ただ武豊騎手が悲願の凱旋門賞勝利を遂げるには、なんとかこなしてほしかった。 それよりも勝ったブローザホーンを褒めるべきだ。ドウデュースと同じ最後方のポジション。菅原明良騎手は、有馬記念のドウデュースのような早めスパートでまくっていき、直線は大外に出した。馬が力をつけているのは間違いないが、あの大胆な判断力は菅原明騎手をたたえるしかない。最後まで馬を信じて乗ったから実現できたのだ。同時に定年した中野栄治元調教師から引き継いだ同馬を、転厩後3戦続けて継続騎乗させた吉岡調教師は、菅原明騎手を信じ続けた。ともに初GⅠ制覇を遂げたトレーナーとジョッキーが抱き合うシーンには「人が馬を育て、馬が人をつくる」という競馬のロマンを改めて感じた。 話は書き出しに戻るが、「土砂降りのロンシャン」には武豊騎手以外にも日本人はいた。ドウデュースの松島オーナー、友道調教師。タイトルホルダーの鞍上で、この日はベラジオオペラに騎乗した横山和騎手、他にもルメール騎手(ステイフーリッシュ騎乗)、川田騎手(ディープボンド騎乗)、そして忘れてはならないのはタイトルホルダーの生産者で、ブローザホーンのオーナーブリーダーである岡田牧雄さんである。 勝負師である彼らは、私のような嫌な予感など覚えずレースに集中しただろう。ただ岡田牧雄さんだけは「よし、いいぞ」と落ちてくる雨粒を歓迎し、雪辱を誓ったのではないか。岡田牧雄さんからは、悔しさに打ちのめされてももっと強い馬をつくって立ち上がってくる負けん気を感じる。だから岡田スタツドの生産馬は、馬場コンディションが悪かったり、消耗戦になったりと、苦しいレースほど強いのだと、私は勝手に思っている。 (作家)
中日スポーツ