3階級王者八重樫が村田諒太“親友”向井と負けで引退、勝てば世界の究極戦
一方の向井は、名門、南京都ボクシング部の出身で、WBA世界ミドル級王者、村田諒太(帝拳)の同級生。村田キャプテンで向井が副キャプテンだった。 日大に進んだ後にプロ転向。2011年にタイでポンサクレックのWBC世界フライ級王座に挑戦して1ラウンド負傷ドロー、2013年にはWBC世界スーパーフライ級王者のシーサケットに9回TKO負け、昨年3月には敵地で香港の大スター、レックス・ツォーに8回KO負けを喫していたが、12月にインタノン・シッチャモアン(タイ)とのWBOアジアパシフィック・スーパーフライ級王座決定戦で1回にKO勝利して返り咲いている。 八重樫が得意とはしないサウスポーで一発はないが、出入りのスピードを身上とするカウンターパンチャー。この20日に、すでに籍を入れていた千尋夫人との結婚披露宴を行い、出席した村田からは「これで負けたらおまえも進退を考えなあかんな」と「負けたら引退」の勧告を受けた。 「あいつに言われなくても、年齢が年齢。これが最後のビッグチャンスになることはわかっている。負けたら引退の覚悟でリングに上がりますよ。階級は違うけど、ここまで村田にずいぶん引き離されたという忸怩たる思いもある。でも、あいつの活躍はいろんな意味で大きな刺激になっている。世界のベルトを巻いて早く奴に追いつきたい。そのためには絶対に負けられない試合になる」 実は、向井のトレーナーの武市晃輔は2005年のミニマム級新人王で、現役時代に八重樫と対戦経験がある。2010年5月に当時、日本ミニマム級王者だった八重樫に同級1位の武市が後楽園で挑戦、0-3の判定で敗れたが、初回にダウンを奪い、その後、3階級制覇となる八重樫を苦しめた。 「ボクサーとしてのベースは8年前と変わらないと思うんです。実際に戦った武市さんのアドバイスをもらえるのは大きいです」 向井にとって力強い参謀だ。 八重樫も「トレーナーは武市さんですよね。やだなあ。右ストレートだと思ったらスイッチしての左でわかんなかった。強かった。センスがあったなあ、ただスタミナなかったけど」と警戒する。 向井が、この試合に進退をかけていることを伝えると「僕も同じ状況。向井にそういう覚悟があることはわかっていた。そのほうがたぶん、いい試合になります。最後は気持ちの勝負になるが、その前の段階で、いかにちゃんとボクシングができるか。いろんな方法で崩しにいくが、一筋縄ではいかないと思っている。ただ、僕の方法は、ある程度決まっている。色々とやってはめていきます。それも面白いです。ぐちゃぐちゃに潰してやりますよ」と、目力を入れた。 負ければ引退、勝てば世界へ、究極マッチは魂を削りあう世界戦並みの注目の試合となる (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)