「命の尊さを伝える教育をしなければ」動物専門学校を開校…週3回の朝の講話で届け続けるメッセージ
熊本市の竜之介動物病院・院長の徳田竜之介さん(63)は2016年の熊本地震発生直後、ペットと飼い主を一緒に受け入れる避難所を院内に開設した。預かったいくつもの小さな命を救ってきた獣医師の信念は「動物の治療を通じて、飼い主の心もケアすること」。この思いを胸に今も第一線に立ち続ける。 【写真】病院をペット同伴避難所として開放した徳田さん。「動物と飼い主に寄り添い続けていく」(1日、熊本市中央区で)=中島一尊撮影
竜之介動物病院の開業から10年目を迎えた2004年。熊本市内に動物専門学校「九州動物学院」を開校した。第2、第3の竜之介病院をつくろうとも思ったが、「動物医療業界には飼い主の心を支えられる人材が必要。動物の命の尊さを伝える教育をしなければ」と考え、学校を新設することにした。
現在、学んでいる学生は3学年約160人。病院にいる犬や猫など100匹以上の看護などを担当する。熊本市の動物愛護センターなどで殺処分が間近に迫った犬を引き取り、世話をすることもある。
講師は動物病院で働く獣医師や動物看護師ら。看護師長の白石史絵さん(51)は、「現場で学べるため、飼い主の気持ちを想像しながら実習できる。動物看護師になりたいという強い信念を持った学生が多い」と話す。
「寿命は私たちよりも短い。限られた時間を、より長く一緒に過ごすことが大切だと気づいた」。卒業生の堀田梨菜さん(28)は、担当した2匹の小さな仲間から命の尊さを学んだ。
熊本地震後に急死した雑種の雄猫「キジ」。死因は余震のストレスだったという。1年ほど面倒をみてきたが、「もう少し何かしてあげられたのではないか」と今思い出してもつらい気持ちになる。
愛護センターから引き取られていた雌の柴犬「つぼみ」は人を怖がり、かみつこうとすることもあった。ボール遊びをしたり、お気に入りのおやつを与えたり。一緒にいる時間を多くしようと心がけ、それを1年ほど続けた。すると、あごや首をなでても嫌がらなくなった。「愛情をかければ、変わってくれる」。2匹との思い出を語る堀田さんは、「命の大切さを教えてもらった。他では得られない学びが多く、貴重な経験ができた」と学院での生活に感謝する。彼女は今、県内で動物看護師をしている。