【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】なんといっても、主演ふたりの芝居が素晴らしい! 『カラオケ行こ!』
観るだけで旅に出たくなります!
もうひとつは、日本・大阪を拠点に世界の映画祭に出品し続けるマレーシア出身のリム・カーワイ観るだけで旅に出たくなります!監督の最新作『すべて、至るところにある』です。 バルカン半島に旅行で訪れたマカオ人エヴァは、映画監督のジェイと出会い、交流を深めます。ところがその後、コロナウイルスのパンデミックや戦争が世界を襲い、ジェイは突然エヴァの前から姿を消してしまいます。 彼を探すために再びバルカン半島を訪れたエヴァは、ジェイが撮影した自分が出演する映画が、『いつか、どこかで』というタイトルで完成していたことを知り、彼の行方を追ってセルビア、マケドニア、ボスニアなどを巡るのですが……。 リム・カーワイ監督は自分のプロダクション、配給で製作を続けている精力的な映画作家。しかも映画で日本と他の国をつなぐ橋渡しをしている第一人者です。そんな彼が、まさかバルカン半島を舞台に撮影するとは、と驚きました。なじみのないエリアだとは思いますが、本作を通して観たことがない景色を体験することになります。とにかく美しく、脳裏にこびりつくロードムービーですよ。 観客に委ねられるところが多い、哲学的な物語ではありますが、観た人同士で語り合ってもらいたい。なんせ、旅をしながらほとんどを即興で芝居したらしいので、その生々しい感じが観ている側の心に忍び込んでくる感覚。分からなくても大丈夫。観るだけで旅に出たくなりますから。 メインキャストが出会う街の人々の生活スタイルが、日本で暮らす人々からするととてつもなくのんびりしていて素敵ですし、旧共産圏らしいモニュメントが数々登場して、それらを観ているだけでも「実物を観てみたい」と思うはず。 ちなみに、スポメニックと呼ばれる建造物は、ヨハン・ヨハンソンの遺作となった『最後にして最初の人類』でも取り上げられましたし、写真集『スポメニック-旧ユーゴスラヴィアの巨大建造物-』(https://www.amazon.co.jp/スポメニック-旧ユーゴスラヴィアの巨大建造物-ドナルド・ニービル/dp/4766134206)も出ていたり。世界は広い、そしてまだまだ観るべきところはあるし、感じ取るべきことがある、と実感できる作品です。 (C)2024『カラオケ行こ!』製作委員会 (C)cinemadrifters 取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己 『カラオケ行こ!』 上映中 『すべて、至るところにある』 1月27日(土)公開 ■LiLiCoプロフィール 1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。