【漫画】全国の刑務官約18000人中、死刑執行担当に選ばれる確率は年間0.1%…刑務官の日常を漫画に描く上でボツにせざるを得ないネタとは
刑務官が明かす死刑の話#1
重い罪を犯した者の生命を奪うことで罰する刑、“死刑”。しかし、その詳細はあまり知られていない。死刑執行までの過程や死刑の決まりなどを描いた漫画『刑務官が明かす死刑の話』をはじめ「刑務官」シリーズについて、作者の一之瀬はちさんに話を聞いた。(全3回の1回目) 【漫画を読む】年間0.1%の確率で死刑に立ち会った刑務官の話
刑務官は身内にも話しづらい出来事がたくさんある職業
--「刑務官」シリーズを描いた、きっかけを教えてください。 一之瀬(以下、同) もともと事件モノ、警察モノのルポを読むのが好きで、そういったジャンルの漫画を描きたいなと思っていました。そんな中、偶然刑務官と知り合う機会があって、これはいいネタになるぞ…と。 --それを元に漫画を描き上げて、いわゆる編集部への持ち込みをしたのでしょうか? いえ、刑務官モノの構想を知り合いの漫画家さんに話していたら、その方が竹書房の編集さんに話してくださったんです。そこからはトントン拍子で話が進んで、すぐに作品作りに移りました。ちょうどその編集さんも、近しいジャンルの作品を立ち上げたいと考えていたみたいで、タイミングがよかったですね。 --そもそものきっかけとなった刑務官との出会いですが、勝手ながら職業的に口が固く、なかなか情報を聞き出せないイメージがあります。意外と仕事の話をしてくれるものなんですね。 もちろん人によりますよ。最初に出会った人がたまたま話し好きだっただけで(笑)。ただ、どの方にも共通しているのが、家族や友だちには話しづらい出来事がたくさんある職業だということですね。その点、私は「ネタください~」というスタンスで行くので、いい吐き出し口になるのかなと思っています。
取材した中でボツにせざるを得ないネタとは
--ふだん溜め込むことが多い分、話せる機会は貴重なんですね。シリーズを通してたくさんの刑務官が登場しますが、どのように協力者を見つけているのでしょうか。 紹介の連続です。実は刑務官って、横のつながりがけっこう強いんです。なので、協力的な方と出会えたことで芋づる式に輪が広がっていきました。 --かなりクローズでドライな世界だとばかり思っていました。さて、本作はご自身の体験やアイデアベースのお話ではない分、ネタ収集やその精査に労力がかかる作品かと思います。漫画作りの簡単な流れを教えていただけますか? おかげさまで複数の刑務官の方に協力していただいているので、ネタは常にストックしていけています。とにかく雑談ベースでお話しして、それをスマホのメモとかに簡単にまとめておくんです。漫画を描くときは、そのメモを見返して、いいものがあったらそれに類するものをかき集めて…といった感じです。 --刑務官の方とは、直接会って情報提供してもらうのでしょうか。 そういうときもありますが、日々LINEや電話などでカジュアルにやり取りしてます。なので鮮度の高い情報が入ってくるんです。 --現場のリアルな情報が入ってくるとなると、かなり重たい話もありそうですが、漫画に“しなかった”あるいは“できなかった”ようなネタもあるのでしょうか。 けっこうありますね。個人が特定されてしまうような話は漫画にしないようにしています。どんなに興味深い話でも、被害者の方や関係者の方に迷惑がかかる可能性があるので。 取材・文/関口大起