広島県西部にある大竹市のメインバンクは四国銀行 本店は高知市、伝統産業がつないだ古くて厚い縁
ゆめタウン大竹(広島県大竹市)で高知市に本店を置く四国銀行のATMを見つけた。大竹市役所にも四国銀の出張所が。市の「メインバンク」である指定金融機関は、1964年の制度開始以降ずっと四国銀となっている。地元以外の金融機関を指定している自治体は中国地方で大竹市だけだ。どんな経緯があるのか。 【写真】大竹市内のショッピングセンターにも四国銀行ATM 市企画財政課で歴史担当の香川晶則さん(65)に理由を尋ねると、「紙が結んだ縁です」との答えが返ってきた。 大竹は江戸期、手すき和紙が栄えた。明治期に機械化の波が訪れ、地元の資産家たちが06年に製紙会社の芸防抄紙(しょうし)を設立。景気低迷で経営不振になり、14年に高知県の製紙会社の土佐紙に合併された。土佐紙と取引があった高知銀行(四国銀の前身)も進出し、16年に大竹支店を開設した。経営難だった大竹貯蓄銀行の従業員や取引先も含めて業務を受け継いだ。 香川さんは「その恩義と堅実な経営から、他の金融機関を指定する理由はなかったのでしょう」と語る。 佐藤守支店長は39代目だ。58年以降の支店長が残した手書きの申し送り書をめくり「大竹も大切な地元。微力ながら力を尽くしたい」と誓う。製紙業は今も基幹産業で手すき和紙の伝統も受け継がれている。1枚の紙は薄いが、縁は厚みを増していた。
中国新聞社