デンゼル・ワシントン、同じ服で二度来日? 黒人の尊厳を守る誇り高きファイター...ではない戸田奈津子が見た素顔
長場雄が描く戸田奈津子が愛した映画人 vol.48 デンゼル・ワシントン
字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターや監督の見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。
前回と同じ服じゃない?
『グローリー』(1989)や『マルコムX』(1992)など、黒人の尊厳を守る誇り高きファイター役を演じることが多いデンゼル・ワシントン。 映画の中ではいつもビシッとしているスマートなイメージですが、私が来日時に会ったときは、いつもでれーっと椅子に座っているような人でね。2作続けてプロモーション来日したときには、「それ、前回と同じ服じゃない?」と言ってしまったこともあるくらい(笑)。 素顔はいつも、おふざけムード。役柄のハードな闘志なんて全然感じさせません。スクリーン上の姿と素顔がかけ離れている、典型的な俳優のひとりです。 私が特に好きな作品は潜水艦の副艦長を演じた『クリムゾン・タイド』(1995)。潜水艦ドラマの例に洩れず、密室の中で繰り広げられる、ジーン・ハックマン演じる艦長との対立のドラマがスリリングでした。 トニー・スコット監督作らしくテンポもいいし、デンゼルの軍服姿も素敵です(軍服は誰が着てもカッコいい!)。
『クリムゾン・タイド』(1995) Crimson Tide 上映時間:1時間56分/アメリカ ロシアの反乱軍が核施設を占拠し、日米を核攻撃すると脅迫。アメリカ政府は原子力潜水艦アラバマを出航させることを決定する。ベテランのラムジー艦長(ジーン・ハックマン)とエリート副艦長のハンター(デンゼル・ワシントン)は、核ミサイルの発射をめぐって激しく対立。 艦内では二つの派閥に分かれて暴動が勃発する。ジェリー・ブラッカイマー製作、トニー・スコット監督作。 デンゼル・ワシントン 1954年12月28日生まれ、アメリカ・ニューヨーク州マウントバーノン出身。『ハロー、ダディ!』(1981)で映画デビュー。『遠い夜明け』(1987)でアカデミー助演男優賞にノミネート、『グローリー』(1989)で同賞を受賞。 『マルコムX』(1992)『ザ・ハリケーン』(1999)『フライト』(2012)『フェンス』(2016)『ローマンという名の男-信念の行方-』(2017)『マクベス』(2021)でアカデミー主演男優賞にノミネートされ、『トレーニング デイ』(2001)で同賞を受賞した。 語り/戸田奈津子 アートワーク/長場雄 文/松山梢
集英社オンライン