センバツ2022 1回戦 東洋大姫路、貫いた「全力」 終盤反撃も及ばず /兵庫
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)に14年ぶり8回目の出場を果たした東洋大姫路は21日の1回戦で高知と対戦。2-4で敗れたが、ピンチの守備でファインプレーが飛び出し、終盤で反撃して粘るなど、退任する藤田明彦監督(65)が徹底して伝えてきた「全力でやりきる」野球を随所に見せた。ベストを尽くした選手に、アルプススタンドから温かい拍手が送られた。【後藤奈緒、村田愛、大原翔】 「TOYO」の文字が金色の刺しゅうで縁取られたユニホームが甲子園に帰ってきた。夏の大会からは約10年ぶりとなる甲子園出場で、アルプススタンドに生徒やOB、ファンら約1600人が駆けつけた。OB会長の恒藤克之さん(67)は「僕らのときとは違うけど、やっぱり東洋のユニホームはかっこいいね」とうれしそう。 初回、二塁打を浴びるなどして2死二、三塁の大ピンチ。続く左翼へのヒット性の当たりに観客は息をのんだが、賀川が飛び込んでキャッチすると大歓声が起きた。母親の裕美子さん(51)は「真面目に実直に頑張ってきた結果が出た。感動した」と笑顔。 エースの森は「本調子ではなかったが、インコースを攻めることはできた」とテンポ良く投げた。母親の真知子さん(44)は「いつも通り落ち着いて投げて」と願いながら見守った。相手強打線に五回につかまり、4安打で先制され、六回に追加点を許した。 一方、攻撃は山下の精度の高い変化球に、打線がつながらない。初代OB会長の中崎俊作さん(73)は「この子たちが一生懸命、頑張ってくれればいい」。八回、練習期間は1週間と急ピッチで準備した吹奏楽部の校歌が選手を勢いづけた。相手失策もあり、1死二、三塁。4番の山根は「打たないと」と活を入れて立った打席で、右翼線へ二塁打を放ち2点を返した。父親の昌之さん(56)は「(相手守備を)抜けてくれ、と思いながら見守った。打撃は苦労していたようだが、なんとか頑張ってくれた」とうなずいた。スタンドはこの日一番の盛り上がりを見せたが、反撃はここまでだった。 試合後、選手たちは引退する藤田監督に感謝の言葉を口にした。山根は「もっと教わりたかったが、恩返しするために切り替えて夏に帰ってきたい」と話し、森は「今の自分がいるのは監督のおかげ。一番感謝している。チームの打撃も守備も、自分の投球レベルも上げて、その姿を監督に見てほしい」と夏を見据えた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇悔しさバネに夏トライ 岡部虎尉主将(3年) チームを精神的にも支えた主将は試合後、「監督の指示通り、みんな思い切ったプレーができた。でも一試合でも多く指揮を執ってほしかった」と悔しさをにじませた。 寡黙で背中で引っ張るタイプだったが、この冬から意識的に声を出すようになった。秋の大会は打撃が不振だったが、体の軸を鍛える練習に取り組み、3月に復調。だが甲子園は簡単でなかった。初回に四球で出て、盗塁を決め、三回に中前打を放つも、得点には絡めなかった。 岡部家は祖父の代から阪神ファンで、3兄弟には「虎」の字が入る。自身は次男で「トライする」の意味も込めて名付けられた。甲子園には家族で何度も通った。選抜出場決定の2週間前に77歳で急死した祖父の乾(つとむ)さんは、孫の甲子園出場を待ち望んでいた。父、浩志さん(47)は「父も楽しみにしていた夢の舞台に立てたのはかっこいい。でももっと思い切ってバットを振れたはず」と言う。「夏の甲子園で躍動する姿を見せて監督に恩返ししたい」と再起を誓っていた。【後藤奈緒】 〔神戸版〕