「ベルばら」は二人の女性の生き方の物語 原作にも登場する「女性宮廷画家」の秘密とは
2025年1月31日から全国公開される劇場アニメ「ベルサイユのばら」。同作の監督や識者らがその魅力を語った。AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号より。 【写真】エッフェル塔前で「あなたオスカルよね?」と声をかけられたコスプレイヤー・MOMOさんはこちら * * * 漫画家・池田理代子による不朽の名作「ベルサイユのばら」。王妃を守る使命に人生を捧げてきた主人公・オスカルは、しかし困窮するパリ市民の惨状に触れ、最終的に市民側につき、王政と戦う選択をする。自分の信念に忠実に生きる様はたしかに現代にも響く。同時に「本作はオスカルとアントワネット、二人の女性の生き方の物語でもある」と劇場アニメで監督を務めた吉村愛(45)は言う。 「アントワネットはわがままなお姫様みたいに思われがちですが、その裏には王宮のしきたりに縛られ孤独を抱える苦悩がある。その部分も描きたかった。本作はジェンダーに限らず『人間として信念を持って生きる』ことを描いています。だからこそ性別や時代を問わず、多くの人に通じるのだと思います」 フランス文学者で宝塚ファンでもある鹿島茂(75)は「日本人はそもそも革命が好き」と分析する。 「実際のフランス革命はルソー哲学の論理的な帰結ですが、多くの日本人はそこまで理解せず、『なんとなく革命ってロマンチック』という感覚がある。『ベルばら』はそれに乗ってはいます。ただ、それだけではない」 市民が立ち上がり、王政を崩す。そして断頭台に消えていく悲劇の王妃マリー・アントワネット。そこにオスカルとアンドレというファンタジー要素をのせた「ベルばら」は物語として非常に優れていると絶賛する。 ■宮廷画家も女性だった 「池田さんは勉強家ですから歴史考証的にもパーフェクト。サブカルのヒットには2種類あって、その時代に合致してヒットするものと、その時代の後に何回も繰り返してヒットするものがある。後者はめったにないけれど『ベルばら』はまさに後者です。理由は物語構造が神話的なレベルに達しているからでしょう。『レ・ミゼラブル』のように時代のほうが物語に合わせてくるのだと思います」 ドイツ文学者で「怖い絵」シリーズで知られる中野京子も、 「日本人のほうがフランス人よりもフランス革命やマリー・アントワネットのことを知っているとよく聞きます」と笑う。