バレーボール男子日本代表が強くなった理由。石川祐希、髙橋藍らが追求する「最後の1点を取る力」<RS of the Year 2023>
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、ラグビーワールドカップ、サッカー・FIFA女子ワールドカップ、世界陸上、バスケットボール・FIBAワールドカップ……数々の世界大会が開催され、多くのアスリートの活躍に心揺さぶられる1年となった2023年。一方で、小野伸二さん、石川佳純さん、岩渕真奈さんなど、長く第一線で競技を背負ってきたレジェンド選手たちが現役引退を決意したことも印象的な一年となった。そこで、結果や勝敗だけではないスポーツの本質的な価値や魅力を伝えてきた『REAL SPORTS』において、2023年特に反響の多かった記事を振り返っていきたい。今回は、着実にチームとしての成長を続けるバレーボール男子日本代表の強さの理由について迫った記事だ。 (2023年7月20日公開) =================================
現在開催されているバレーボールの国際大会・ネーションズリーグ。10勝2敗という堂々たる成績で予選ラウンドを2位通過した男子日本代表は、悲願のベスト4進出をかけて20日、スロベニアとのファイナルラウンド準々決勝に挑む。大事な一戦を目前に控え、本稿では今大会開幕からの10連勝で男子日本代表の世界大会での連勝記録を塗り替え、「なぜ急に強くなったのか」という声も聞かれる男子バレーの強さの要因に迫る――。 (文=米虫紀子、写真=アフロスポーツ)
10勝2敗の2位で予選ラウンドを終えた“強豪”
“10連勝”の響きがもたらす効果は絶大だった。 現在開催中のネーションズリーグで、男子日本代表は予選ラウンド開幕からの連勝を10まで伸ばし、首位を走り続けた。11戦目で世界ランキング2位のイタリアに競り負けて今大会初黒星を喫し、最終戦で世界ランキング1位のポーランドに敗れ、最終的に10勝2敗の2位で予選ラウンドを終えたが、それでも堂々たる成績だ。 しかもその成績だけでなく、試合内容や一つ一つのプレーにも、見る人を惹きつけるものがある。 海外のトップ選手の威力のあるサーブにも簡単には崩されないサーブレシーブ力や、世界の強力なスパイクも自チームのチャンスにつなげられる守備力。そこから、4人のスパイカーが同時に攻撃を仕掛け、司令塔の関田誠大が相手ブロックをしっかりと確認しながらベストな選択をして、能力の高いスパイカー陣がそれに応えて得点する。スパイクを打つと見せかけてトスを上げるフェイクセットなど、トリッキーなプレーも鮮やかにこなし、全員が楽しそうに躍動する姿が見る者を魅了する。 注目度が上がっていることは選手たちも感じている。ミドルブロッカーの小野寺太志はこう話していた。 「(ネーションズリーグ第2週の)フランス大会や(第3週の)フィリピン大会から帰国した時に、空港に来られていた方も増えていたし、注目されているんだなとは感じます。みんなSNSのフォロワーも増えているし、いいことですよね。結果を残せば見てくれると思っていたので、今後も頑張るしかないなと」 最近、「なんで日本の男子バレーは急に強くなったの?」という声をよく聞くようになった。だが決して“急に”強くなったわけではない。兆しはあった。