才木は打ち勝った「あと一人」コールのプレッシャー “阪神流”応援スタイルはアリなのか
ZOZOマリンスタジアムの阪神応援席に大合唱がこだまする。1点リードの9回裏2死二塁、マウンドには昨季最多セーブ投手の岩崎優。カウント3-2で、それは「あと一球!」コールに変わる。だが、そこで彼が投じた球は、ロッテ・友杉篤輝の一振りでレフトオーバー。土壇場で同点とされた阪神はその後、延長サヨナラ負け。今季ワーストの5連敗を喫した――。 「あと一人」コールは、何十年も前から続く阪神独特の応援スタイルだが、近年は「相手チームに失礼」などと物議を醸している。いかにも“昭和”で“不適切”な応援だ、というわけだ。 「ピンチの際は、味方投手に過剰なプレッシャーを与えるだけ」と反対派に回る虎党もいて、今回のように、結果的に投手の足を引っ張る形となった日には、虎キチもそうでない人も激しい論争を繰り広げる。
不快感を吐露する選手も
「実際、『あと一人』コールに不快感を吐露する阪神投手は少なくありません」 とスポーツ紙虎番記者。 「ただ一方で、例えば一昨年最多勝投手の青柳晃洋は『先発で9回まで投げてこその光景』と、伝統的な応援を歓迎しています」 冒頭でつづった試合の翌日のロッテ戦も似た展開になった。1-0で阪神リードの9回裏、2死ながら走者三塁のピンチ。先発の才木浩人(25)が2ストライクを取ると「あと一人」は「あと一球」に変わり、ボルテージは最高潮に達した――。 試合後のお立ち台で、このときの大声援について感想を求められた才木は、 「ウェーイ! と思った」 プレッシャーを力に変えた強心臓。打者を打ち取り、試合終了。チームは連敗ストップ。才木はハーラートップタイの6勝目を挙げた。
「気詰まり」な最近の球場事情
「最近は『替え歌はダメ』だの『“くたばれ読売”コールは禁止』だの、応援について小うるさいでしょ」 と先の記者がボヤく。 「以前は、相手投手をKOすると、阪神ファンが皮肉を込めて『蛍の光』を歌うのが風物詩でしたが、いつしか無くなった。ヤジもめっきり減りました」 観戦マナー向上により女性客や子供客が増えた、という声を聞くが、 「逆に、気詰まりな球場に足を運ばなくなったオールドファンもいるはず。高校野球じゃああるまいし、お行儀ばかり良くてどうする? プロならヤジごときでメンタルやられるなよ! とホントは書きたいけど……不適切ですよね」 「週刊新潮」2024年6月13日号 掲載
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