【台湾】電動自転車のモデル拡充 倚天酷碁の鍾逸鈞総経理に聞く
台湾のパソコンブランド世界大手の宏碁(エイサー)グループで、電動アシスト自転車事業を展開している倚天酷碁(エイサーガジェット)。2023年に電動アシスト自転車「ebii」を発売し、24年は新たに8モデルを発表した。倚天酷碁の鍾逸鈞総経理に今後の事業展望を聞いた。 ――今年3月に開かれた自転車の国際見本市「台北国際自行車展(台北サイクル)」で電動アシスト自転車の新モデルを発表した 昨年発表したのは1モデルだったが、今年は5モデルを新たに発表した。多くの同業者が、これほどの短期間でどうして多くのモデルを発表できるのか驚いたようだ。 われわれは自転車という分野に強い関心と自信を持っている。この産業における発展には2つの重要な方向があり、1つはモーター、コントローラー、バッテリーの統合など重要な技術を手中に収めることだ。もう1つ重要なのが、パートナーとの緊密な協力だ。自転車のフレームの設計やハンドル、チェーン、ブレーキなどは基本的にアウトソーシングしている。ゼロから手がけるのではなく、既存の自転車にわれわれの中核技術を埋め込むことで、スピーディーに自転車づくりを進めることができる。 ――新たなモデルについて教えてほしい 「エイサーeカーゴ」は、通勤と荷物の搬送という2つのニーズに応えるものだ。「エイサーeシティー」と「エイサーeアーバン」はいずれも通勤のニーズを想定したモデルとなる。 「プレデターeノマドR」はタイヤが太く、安定した乗り心地が特徴。米国やカナダは路面の状況が悪い場所もあるが、この自転車であれば基本的に乗ることができる。 「ebiiエリート」も発表した。 昨年3月に発表したebiiより購入しやすいモデルと位置付け、一部の高価な部品を比較的手ごろな価格のものに置き換えた。デザインはebiiと同じで、機能的に大きな差はない。 自転車は「for fun(楽しむこと)」と「for tool(道具)」という大きく2つの要素に分けることができる。例えば、ebiiは街中を移動するための自転車であり、通勤利用などを想定しているため、80%がfor toolと言えるだろう。休日に乗ることもできるので、20%はfor funとなる。荷物の搬送や子どもの送り迎えというニーズに対応するエイサーeカーゴも80%がfor tool、20%がfor funとなる。 ――ebiiの販売状況はどうか ebiiは日本のグッドデザイン賞を含めて、多くの賞を受賞した製品。台湾では昨年末に販売を始めたが、販売台数はまだ少ない。価格は9万8,800台湾元(希望小売価格、約47万5,000円)と、安くはない。今乗っている自転車を電動アシスト自転車に変えるためにどれくらいお金をかけたいと思うか、その答えは人によって異なる。 電動アシスト自転車の当初の価格は約5,000米ドル(約78万円)だったが、その後、価格が次第に下がり、現在、欧米ではほとんどが2,000米ドル以下となっている。技術が成熟していくことで、価格は今後も下がるとみている。最終的には従来の自転車とあまり差はなくなり、その時には多くのユーザーが電動アシスト自転車を選ぶだろう。普及に当たって最も重要なのは、価格が手軽かどうかだ。 ――海外市場に進出する上での課題は 電動アシスト自転車に関する規制は地域によって異なり、市場参入を決めたら、規制に関する申請を行う必要がある。 海外進出する際には現地で販売を手がけてくれるパートナーを見つける必要があるが、アフターサービスの提供も重要となる。従来の自転車であれば、どの自転車店でも修理が可能だろうが、電動アシスト自転車は事情が異なる。技術、販売、アフターサービスなどトータルソリューションが必要で、全て準備できて初めて海外市場に進出できる。 ――有望視している市場はどこか 電動アシスト自転車で最も良いのは成熟市場を攻めることだ。西欧や北米地区などがそうで、インフラが整備されている上、自動車の使用をできる限り避けたいと考えられている。現時点でわれわれの主な海外市場は欧州と北米だ。これらの地域ではエイサーブランドが強い。 一方、新興市場は二輪車など代替品が多くある。東南アジアやインド、アフリカは従来の自転車または二輪車を必要としており、電動アシスト自転車の需要が高まるにはまだ時間がかかると考えている。 パートナーが見つかっていないため、日本での販売はまだだが、日本市場に参入したいとずっと考えている。(聞き手=安田祐二)