ようこそ引退なきプレーグラウンドへ(3x3バスケ・TOKYO DIME 藤髙宗一郎)
結局まだあきらめきれずに現役を続行
「私、藤髙宗一郎は5人制のプロバスケットボール選手を引退する決断をいたしました。実は、4月1日から藤髙先生と呼ばれる日々を過ごしています。事後報告となり、申しわけありません(以下略)」(バンビシャス奈良公式サイトより) 4月15日、藤髙は引退を報告した。4年前から教員になる考えがあった。3×3日本代表として東京オリンピックの舞台に立ち、その後にユニフォームを脱ぐ決意を固めていた。しかし、コロナ禍によって1年延期となり、その後のチャレンジで報われることなく「不完全燃焼のままでした」ともう一度奮起し、現役続行を決めた。 「コンディション的にも良かったし、バンビシャスがオファーしてくださったので、パリまでしっかり現役として5人制も3人制も続ける覚悟を持ちました」 秋~春は奈良で、それが終わればTOKYO DIMEで、サイズの異なるボールを追いかける。しかし、日本代表に縁がないまま2度目のオリンピックイヤーを迎えた。母校の恩師から「そろそろ学校の先生になったらどうだ」とふたたび諭されたのが、昨年3月。悩み考え抜いた末、「ラスト1シーズン、思いっきりバスケをして、これが終わったら教員になろう」と決断する。無我夢中で奈良のために、そしてまだ消えぬパリオリンピックメンバーへの招集を期待し、2023-24シーズンを駆け抜けた。1年前に決断した引退に対し、「悔いはないです」という藤髙だが、言葉を濁す。 「……けど、未だにもう少しできたのかなぁ、と思うことはあります」 インタビューを行ったのは3×3.EXE PREMIER開幕戦。同じ日、遠いハンガリーで仲間たちが最後のチャンスをかけたオリンピック最終予選(以下OQT)を戦っていた。「まだ1%なのか、それ以下かもしれないけど、OQTを勝ち上がってくれれば、もしかしたらここでアピールをすればオリンピックの候補選手として呼ばれるかもしれない。その可能性にかけて、今も真剣です。もちろん素直に、今がんばっている代表メンバーには心の底から応援しています」と藤髙の心は折れていない。 「引退を自分で決められるような選手は少ない中でセレモニーもしていただいて、すごく幸せなことだなと思いつつ、3人制は結局まだあきらめきれずに現役を続行しています」 NBL~Bリーグの10年間、お疲れ様。あらためて、引退なきプレーグラウンドへようこそ! TOKYO DIMEには40歳の小松昌弘、今シーズン中に44歳を迎える鈴木慶太はまだまだ衰えを知らない。3×3でバスケへの情熱が冷めやらぬプレーを見せる元プロ選手も多い。FIBAが3×3を公式種目としてスタートさせてから、今年で14年。その前からSOMECITYやLEGENDといったストリートボールシーンでプレーしてきた選手たちが、今なお第一線で活躍する。落合知也(ALPHAS.EXE)もその一人であり、このプレーグラウンドに引退はないと言っても過言ではない。20年来続ける選手たちに引き際を問えば、「誰が決めるんですかね?」と答えが返ってくる。藤髙もその環境を欲していた。 「これから教員を続けていく中でDIMEがいつまで必要としてくれるか、また他のチームに行けるかもまだ分からないですけど、続けられる限りは僕も3×3はがんばりたいです。慶太さんを越えるのはなかなか難しいですけど(笑)」 その横でオリンピックへ向け、日本代表のサポートスタッフとして尽力してきた鈴木慶太が、「まだまだ伸びますよ」と太鼓判を押した。TOKYO DIMEの練習でも、「日本代表で必要なことをチームに落とし込んでくれています。まだまだ学べることがたくさんあります」と藤髙にとっても、最高の環境である。東京オリンピックのときは開催国枠で出場が決まっていたこともあり、こぞってBリーガーが参加したが、「シーズン中に参加して良いというクラブも少なくなっている」ことを背景に、挑戦する選手も限られてきた。3×3.EXE PREMIERのレベルが年々上がっていることを藤髙も実感しているからこそ、「いろんな若手選手に負けないようにがんばりたいです」と4年後を視野に入れる。