人肉を喰らい、目玉が飛びだす…80年代の北米を震撼させた『血のバレンタイン』とは
ショッキングな描写の連続で1980年代のスラッシャー映画の“伝説”と化した『血のバレンタイン』(81)が、Blu-ray2枚組の超・特別版となってスティングレイから発売中だ。2009年にリメイク版も製作されるなど、公開から40年以上経った現在もカルト的人気を誇る本作。国内初Blu-rayは本編も特典映像もホラーファン垂涎の“究極仕様”となっているので、本稿では実際の商品から注目ポイントを紹介していこう。 【写真を見る】あまりの残酷さから、公開時には大幅カット…問題となったスプラッターシーンとは ■ツルハシの殺人鬼が、小さな町を血で染める 本作の舞台はハニガーという小さな炭鉱町。あるバレンタインデーの夜、この町の炭鉱で爆発事故が発生。5人が生き埋めとなったものの、1名が奇跡的に救助される。しかしその鉱員ハリー・ウォーデンは、仲間の人肉を食べて生きながらえていたのだった。精神に異常をきたしたハリーは「バレンタインデーを祝うな」という警告と共に殺人事件を起こし、姿を消した。それから20年の歳月が流れ、事件を知らない若者たちの手によって町にバレンタイン・パーティが復活。ところがそれを境に、凄惨な事件が続発することに…。 今回発売されるブルーレイには、北米公開バージョンである90分の「R指定版」と、ハリウッドの大手映画会社の重役たちによってカットを余儀なくされた流血や人体損壊(目玉が飛びだすなどの具体的なカット)等の残虐描写を復活させた93分の「アンカット版」の2バージョンが収録されている。どちらもオリジナルネガから4KスキャンされたHDマスターで、実際に観てみると、VHSで観た際とは比べ物にならないあまりにクリアな映像に驚かされた。 今回のリマスターは特に物語後半の炭鉱内のシーンで真価を発揮している。薄暗いなかに凝った特殊メイクと血のりが映える殺人シーンは鮮烈さを増しており、フィルム特有の風合いと相まって強い緊張感が感じられた。 ■初ソフト化となる「アンカット版」と「テレビ吹替」に感涙! さて、本作は1981年の日本公開時にはオリジナルバージョンで劇場公開されたものの、その後発売されたVHSやDVDソフトでは北米公開バージョン(つまり、90分のR指定版だ)が収録されており、残虐描写の数々は長年にわたって封印されていた。今回、発掘された削除シーンのネガから作成された93分の「アンカット版」を観ると、単に残酷カットが増えたというよりも演出のテンポに差を感じ、3分という分数以上に大きく印象の違いがあった。 また、1986年にフジテレビ系「ゴールデン洋画劇場」でテレビ放映された際の日本語吹替を、「R指定版」と「アンカット版」の両方で楽しむことができる(一部吹替えが存在しない箇所は字幕対応)のも大きなポイント。この吹替版にはテレビ吹替ファンならば間違いなくピンとくる、とんでもない豪華キャストが揃っており、志垣太郎、池田秀一、坂口芳貞、玄田哲章、野島昭生、小山茉美、高島雅羅…と主要キャラクターの声優陣を並べるだけでもヨダレものだ。 実際に観てみると、本作は若者たちの群像劇でもあるため吹替もアッパーな仕上がり。『ターミネーター』(84)前の玄田哲章がぽっちゃりしたホリス(キース・ナイト)を演じていることがおもしろく、新鮮に感じられた。ほかキャストも終始ハイテンションで、テレビ吹替らしい濃厚な芝居を堪能した。 ■豊富な特典で、幻の傑作を味わい尽くせ! 特典映像は、ディスク1・2あわせて3時間以上も収録されている。ディスク1にはジョージ・ミハルカ監督をはじめ、TJ役のポール・ケルマンやアクセル役のニール・アフレック、セーラ役のロリ・ハリアーらキャスト陣の回想形式のインタビュー映像が収録。ディスク2には監督による音声解説や予告映像の数々に加え、製作35周年のタイミングでキャスト陣が再集結した同窓会映像も収録されているのがうれしい。 さらに封入特典として同梱される山崎圭司解説の特製16Pブックレットには、本作の制作から北米公開に至るまでの経緯や、当時のホラー映画のトレンド、のちのホラー映画に本作が与えた影響などが記されている。ディスク1に収録されるバージョン比較映像と合わせてチェックすることで、1980年代のホラー映画の真骨頂を隅々まで味わい尽くすことができるだろう。 「ソフトに収録されていないショッキングな描写がある」と噂されながらも、そもそも本編自体観られるチャンスが少なく、なかば都市伝説的であった『血のバレンタイン』の“真の姿”を目の当たりにできる本商品、是非とも入手してコレクションに加えてほしい。 『血のバレンタイン Blu-ray2枚組 超・特別版』はオフィシャルサイトのほか、ディスクユニオン新宿シネマ館、秋葉原トレーダー、Amazon.co.jp等のストアにて発売中。 文/久保田 和馬