〈“ノーモア立憲共産党”が裏目?〉リベラル票の分散で“自民逆風選挙”でも思わぬ苦戦を強いられる選挙区も…立憲と共産「野党共闘」のホンネと建前
リベラル票が割れ苦戦する選挙区も
立憲からすれば共産との野党共闘瓦解がすべての選挙区でマイナスに働くわけではないが、冒頭に触れた東京18区においては、共闘解消が選挙情勢に大きな影響を与えてしまっている。 東京は地方と比べて流動性が高いため、組織票や固定票が定着しにくく、浮動票や無党派層が多い傾向にある。 そのため、共産党を支持するリベラル層の票も他地域に比べると一定程度出るため、立憲都連では共産に候補者を降ろしてもらうことが選挙戦略のセオリーになっており、そのなかで共産の支援によって自民に競り勝つ候補も多くいた。 実際に、立憲が議席を減らした2021年衆院選でも、東京都内では8つの選挙区で立憲が自民に勝つなど一定の成果を残している。 しかし、今回は複数の選挙区で共産が新たに候補者を擁立したため、情勢が前回よりも厳しくなってしまっているわけだ。 共闘瓦解に苦しむもう1つの選挙区が東京15区だ。 東京15区といえば、今年4月に行なわれた補欠選挙で、自民が「政治とカネ」の問題で候補者擁立を見送る中、小池百合子都知事が乙武洋匡氏を支援したが不発に。 その中で、立憲の酒井菜摘氏が初当選を果たしたが、このとき、共産は擁立する予定だった候補者を降ろし、酒井氏と政策協定を結んでいた。 まさに、野党共闘が実現した形だったわけだが、今回は共産も前回降ろした小堤東氏を擁立。 各政党や報道各社による情勢調査の一部では、酒井氏が自民の擁立した大空幸星氏にリードを許している情勢となっている。 立憲都連関係者は「大空氏がテレビ出演も重ねてきた25歳の超若手で勢いがあるという面もあるが、やはり共産に候補者を立てられてリベラル層の票が取られている影響は大きい。 情勢調査でも立憲と共産を合わせたら自民に勝てる数字なのに、割れているがゆえにリードされているような状態だ」とため息をついた。
共産の狙いはあくまで野党共闘
このように、これまで野党共闘が成立していた選挙区の一部で新たに候補者を擁立した共産党だが、その背景について野党関係者は、「共産には立憲が離れようとするのを牽制する狙いがある。 共産も党員数が年々減る中で、候補者をあちこちに立てるのは資金的にも組織的にも厳しくなってきており、本当は野党共闘を進めていきたいのが本音だ。 今回の選挙で共産が支援しないと勝てる選挙も勝てなくなることを示すことで、選挙後に立憲の方向性を考え直させようとしているわけだ」と語った。 一方で立憲内からは「そもそも共産が候補者を立てていても選挙に勝てる力を各議員つけなければいけない。そうでなければ永遠に『立憲共産党』と揶揄されて終わりだ。今回の選挙は、共産と選挙協力しなくても勝てることを示す良い機会だ」(中堅議員)という声も挙がっている。 そもそも立憲と共産では天皇制や自衛隊、日米安保などの基本政策における隔たりが大きい。 そのことを無視した選挙協力によって、これまで「野合」と批判され、議席がいまひとつ伸び悩んできたのが、民主党政権崩壊後の野党だったはずだ。 共産党の候補者を迎え撃ちながら、自民の候補者に競り勝つことができるのか。まさに今回の選挙では、立憲議員の地力が試されているといえるだろう。 取材・文/宮原健太 集英社オンライン編集部ニュース班
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