開発担当者「社長にやれと言われたので」…元・味の素マーケティングマネージャーが見た〈ヒットが出ない企業〉の決定的特徴、5つ
「つくれば売れた」時代は過ぎ去り、いまや「絶対に買いたいものはあまりない」時代。従来の考え方で商品を開発し販売しようとしても、かつてのようなヒットを望むことはできません。モノを売るには、今日において求められるマーケティングを考える必要があります。中島広数氏の著書『グローバルで通用する「日本式」マーケティング』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、今回は「マーケティングが苦手な企業」に見られる5つの課題を見ていきましょう。
マーケティングが弱い企業には、共通する「5つの課題」がある
ヒット商品をつくるためには、絶対の正解を求めるのではなく、「はじまりはいつも仮説」という姿勢で、自分たちなりに考え、試すことが大切です。実はこうしたことを繰り返すうちに仮説の精度は上り、成功をつかみやすくなります。 本稿からは私がマーケターとして、「はじまりはいつも仮説」を繰り返しながら、経験的に身につけた「こうしたらもっと成功に近づきやすくなるのでは」を紹介させていただきます。私はそれらを「ヒットの法則15原則──成功の5軸×3原則」として体系化していますが、まずはその前にマーケティングがうまくいかないなと感じている企業に見られる「5つの課題」について触れることにします。
【課題(1)】ターゲットが不明確
マーケティングで大切なのは、最初に「この商品やサービスは誰に売るのか、誰に使ってもらいたいのか」を明確にすることですが、企業の中にはターゲットを明確にしないままに、社長や専務といったトップ個人の経験と勘で「これは売れそうだ」と思ったものを開発しているケースが見受けられます。 そのため、たとえば私が開発担当者に「これは何のために、誰のために開発しているんですか?」と質問しても、理由がはっきりせず、「社長にやれと言われたので」といった答えが返ってくることがよくあります。これでは製品は出来上がるかもしれませんが、ヒット商品をつくるのはとても難しいです。
【課題(2)】ユーザー理解が欠如
マーケティングにおいては最初のコンセプトがとても大切なのですが、研究開発や製造技術が強く、自信のある企業で起こりがちなのが、持てる技術を結集して製品をつくったものの、それをどうやってユーザーに理解させ、トライアル購買させるかが欠如しているため、販売の段階で大変な苦労を強いられるというケースです。 たとえば、家電製品などにはとてもたくさんの機能がついており、技術者はさらに最新の機能をつけようとしますが、それらの機能のうちユーザーが実際に使っているのは、ほんのわずかというケースがほとんどです。スティーブ・ジョブズがかつて追放されたアップルに復帰したのは、同社が経営難に陥ったからですが、復帰したジョブズが最初にやったのは「どこが違うのか」がほとんど分からないような何十種類という製品をわずか4種類に絞り込むことでした。マーケティングが弱く、技術の強い会社が陥りがちなのは、技術の詰まった製品を次々とつくるものの、売ることができず、さらに新たな製品をつくるという悪循環です。 製品というのは自分たちがいいと思っているものをつくりがちですが、その良さがユーザーに理解されてこそヒット商品になるのです。