阪神の救世主、3年目の豊田寛が甲子園にかけるワケ
【球界ここだけの話】チーム打率が1割台になるかも!? 虎党の心配は杞憂に終わり、阪神は6月27日の中日戦(甲子園)では12試合ぶりの2桁安打で8得点。打率は・220まで向上した(28日現在。とはいっても、セ・リーグ最下位だけど)。戦いの舞台は狭い神宮に変わるということで、攻撃陣も前向きな気持ちになれるだろう。 首位広島に食らいついたことができた要因の一つが、2軍から昇格させた選手が起爆剤になったこと。筆頭は豊田寛外野手(27)。2022年に日立製作所からドラフト6位で入団。新人年こそ1軍で9打席ノーヒット、2年目は1軍で出場なしだったが、今年は6月7日に1軍昇格すると、今季初めてスタメンを任された13日のオリックス戦(京セラ)ではプロ初安打を含む2安打と活躍。26日の中日戦(甲子園)では延長十回に代打登場すると追い込まれてもファウルで粘り、最後はヘッドスライディングで内野安打をもぎとった。ここまでガッツマンだったのか、と驚いたファンも多かったはずだ。 甲子園を本拠地にして戦える喜びを実感している。豊田には高校時代からの強い思いがあった。 横浜市で生まれ、名瀬中時代は戸塚シニアに所属。東海大相模高に進学したのも甲子園出場に最も近いという理由からだった。1年秋からベンチ入り。2年夏の甲子園は初戦の盛岡大付高に敗北したが、豊田は聖地の土を持ち帰ることをしなかった。絶対に甲子園に帰ってくる-。周りの選手が袋に詰めたりしていても豊田は動かず、ただ唇をかんでいるだけだった。その1年後に主砲として全国制覇。「だから、家には甲子園の土はないんですよ」。父・昌史さんはニコッと笑う。 豊田は28日現在で6試合に出場し、12打数4安打(打率・333)。1軍での甲子園初安打は18日の日本ハム戦だった。育成出身の野口恭佑外野手(23)が1軍に昇格したことで、さらなる競争が予想されるが、チャンスを手放したくはない。少年時代からの夢だった甲子園から離れたくない。だから、上半身主導だったフォームも改良し、バットを短く持ち、頭から滑り込んでいる。 今年2月には長女が生まれ、一家の大黒柱としての自覚も増した。甲子園特有の黒土にまみれながら、豊田が起爆剤を超えた存在になってみせる。(阿部祐亮)