「奇麗な、悪」場面写真

瀧内公美が一人芝居に挑んだ映画「奇麗な、悪」の予告編がYouTubeで解禁された。 【動画】映画「奇麗な、悪」予告編（他8件） 中村文則の短編小説「火」を奥山和由が映像化した本作では、瀧内演じる主人公が自身の悲惨な人生を語り続ける。予告編には、主人公が精神科の医者らしき人物に「トラウマってなんですか。私にはよくわかりません。人間って、そんなに簡単にできてるのでしょうか？」と問いかけるシーンなどが切り取られた。 このたび、原作者の中村と音楽を担当した口笛奏者・加藤万里奈からコメントが到着。中村は「映画は、小説よりもどこか『前』を向いている印象がある。瀧内さんによる、奥に芯の見える主人公像もそうだった。この映画はこのように完成したことで、『火』の主人公を救ったのかもしれない」、加藤は「混沌と平穏、暴力と愛情、そして嘘と本当。世界は曖昧なことが多い。おぼろげな旋律に、口笛でぴゅ～っと」と述べている。 「奇麗な、悪」は2025年2月21日より東京・テアトル新宿ほか全国で順次公開。 ■ 中村文則 コメント □ 「前」を向く この「奇麗な、悪」の原作の「火」は、様々な人から、演じてみたい、という声を聞いていた。 「火 Hee」として桃井かおりさん監督・脚本・主演で映画化され、「業火」として三木美智代さんによって舞台化されている。「火 Hee」でプロデューサーを務めた奥山和由さんから、「火」をもう一度映画にしたいと言われた時は、しかし驚いた。映画化としては、二回目になるから。 出来上がったものを観て、さらに驚くことになる。原作の通りではあるけど、これは一人の女性が、話しているだけの映画。なのに、これほどまでに、引き込まれる。 主演の、というか、お一人しか出演していないのだが、瀧内さんは実に見事だった。多方面から大きな注目を浴びている俳優とは知っていたが、従来の映画には見られない、ここでしか味わえない独特の言語空間をつくり出していた。一人の女性が、自分の内面の奥の奥を、誰もいない場所で、独白する。通常の言葉だけが、連なるはずがない。他者に言う自然な言葉もあれば、反対に内面の奥を探るような、社会化されていない観念的な言葉もある。そして構える言葉、吐き出す言葉、攻撃、防御、揺れ──、あらゆる種類の言葉が解き放たれ、映画空間に言葉の「場」がつくり出されていた。その演技力、存在感。すさまじかった。 映画は、小説よりもどこか「前」を向いている印象がある。瀧内さんによる、奥に芯の見える主人公像もそうだった。この映画はこのように完成したことで、「火」の主人公を救ったのかもしれない。 あらゆる文化が平均化していく中で、このような作品が日本映画にあることが、嬉しい。 ■ 加藤万里奈 コメント 混沌と平穏、暴力と愛情、そして嘘と本当。 世界は曖昧なことが多い。 おぼろげな旋律に、口笛でぴゅ～っと。 (c)2024 チームオクヤマ