ドイツ極右、度重なるスキャンダルでも勢い 欧州議会選で移民問題が追い風
【パリ=板東和正】欧州連合(EU)の欧州議会選(定数720)では、ドイツで極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進する勢いを見せている。党幹部らが移民の大規模追放を謀議した疑いや、ロシアの情報機関に協力した疑惑が浮上したにも関わらず、景気低迷や移民急増に不満を募らせる支持者を確実に取り込んでいる。 「われわれは欧州議会にかなりの人数を送り込む」。ドイツで9日に実施される欧州議会選を前に、AfDの幹部は現地メディアにこう自信を見せた。 ドイツには加盟国最多の96議席が割り当てられており、欧州のニュース専門テレビ局「ユーロニュース」の予測では、AfDはこのうち17議席を獲得し、現有9議席から伸長。ショルツ首相の中道左派「社会民主党」をしのいで第2党になる可能性がある。 AfDは2013年、欧州単一通貨「ユーロ」反対を掲げて結成されたが、その後、移民・難民の受け入れ反対を主張するなど右傾化を強めた。対露制裁に反対するなどロシアに融和的な姿勢をとる。ソ連の影響下にあった旧東ドイツ地域を中心に支持を拡大し、昨年12月の独東部の市長選ではAfDの候補者が初当選。今年9月の旧東独地域の3州議会選挙でも第1党をうかがう。 ただ、「過激派政党」(独メディア)と称されるAfDにはスキャンダルが絶えない。1月には、党幹部らが移民の大規模な追放計画を協議していた疑惑が浮上。最大200万人の移民を追放して北アフリカに移住させる案を話し合っていたとみられている。 ウクライナ侵略を続けるロシアを支援したとの情報もある。独誌シュピーゲルは2月、AfDの連邦議会議員の顧問(当時)が露連邦保安局(FSB)の諜報員とみられる人物と連絡を取り合った疑惑を報道。顧問はFSBの指示を受け、独政府によるウクライナへの兵器供与の停止を求める訴訟をAfDと協力して起こそうとしたという。 スパイ行為も疑われており、独連邦検察庁は4月、欧州議会の情報を中国側に流した容疑でAfDに所属する欧州議会議員のスタッフを拘束したと発表した。 欧州議会でAfDは極右会派「アイデンティティーと民主主義」に加わっていたが、5月下旬に除籍された。AfDの欧州議会選候補がナチス・ドイツを擁護する発言をしたためで、極右勢力もAfDに距離を置いた格好だ。