意外と早かったイスラエルによる「報復」が現時点で意味すること、「暗黙のルール」に基づいた報復の応酬だが
その上でイスラエルが報復攻撃を行えば、大規模に反撃するとして事態の収拾を図っていた。イランには、イスラエルがガザ戦争でハマス掃討作戦に手こずり、強固な同盟関係にあるアメリカとイスラエルの間がぎくしゃくしてバイデン政権のイスラエルに対する不信感が強まっているとの読みもあった。 実際、バイデン大統領はイスラエルのイラン攻撃に反対する姿勢を示し、イスラエルが攻撃したとしてもアメリカは攻撃に加わらないとの方針を明確にした。
イスラエルのネタニヤフ首相は、バイデン大統領との関係が良好とは言えず、トランプ氏の大統領再選に期待しているとみられるが、バイデン大統領を完全に黙殺して同盟関係を危機に陥らせることもできないだろう。 バイデン大統領が明確にイランへの報復に反対する中、大規模な報復に出れば同盟関係に亀裂を生じかねさせず、報復しなければイランに見くびられてしまうことから、アメリカ・イスラエル関係を損なわず、さらにはイランに対しても、いつでも大規模な攻撃を仕掛けられるというメッセージ性を送るような報復にとどめたようだ。
■これで「幕引き」とはならない可能性も ただ、イスラエルは過去にサイバー攻撃など水面下の戦いでイランを攻撃してきたことから、今局面がこれにて幕引きとはならないことも想定しておくべきだろう。 イランの攻撃は史上初のイスラエル領内への直接攻撃であり、規模も大きかった。このため、イスラエルの報復としては不十分であり、複数回に分けるか、手法を変えるかしてイランに打撃を与えてくることも考えておく必要がある。
イランのイスラエル攻撃はルールの逸脱を許さないというメッセージであり、報復の標的も軍事関連に限られた。イスラエルも、イランの軍事関連施設を標的にしたと伝えられ、報復の応酬となっている双方の衝突は一定のルールが守られている形だ。 イランの核開発は表向きにはエネルギー開発など非軍事との位置付けで、仮にイスラエルが核関連施設を攻撃したとなると、非軍事かつ国益に関わる標的が狙われたことになり、イランとしても、新たな報復に出ざるを得ない。イランの核施設が報復攻撃の標的になったとの情報はなく、今のところは想定される枠内に対立が収まっていると言えよう。