微妙な風向きのズレで北九州市に“強い風”…ツルツルの路面凍結が目立ったメカニズム【気象予報士の解説】
最強寒波の到来により、福岡県では「北九州市周辺」で発生した事故が目立った。多くの場所で路面がツルツルに凍結し、大型トレーラーがスリップし、はねられた歩行者が死亡する事故も起きた。同じ沿岸部にある福岡市の路線バスが運行したのと対照的に、北九州市では全線が運休した。なぜ、北九州市の影響が顕著だったのだろうか?気象予報士は、“風の強さ”が影響している可能性を指摘する―。 【写真で見る】ツルツルの路面凍結のメカニズム
冷たく、強い風が路面の熱を奪い続けた可能性
(龍山康朗=RKB気象予報士・防災士) 路面が凍結するには、降雪、あるいは降雨に加え、気温が下がることが必要です。その気温低下には風の強さが大きく関わっています。気温が下がるパターンは2つあります。 ▽パターン1:風が弱く放射冷却で気温が下がる。 このパターンで発生したのが、2016年1月、大牟田市などでの水道管の凍結破裂です。 ▽パターン2:風が強く、その風に熱を奪われ、気温が下がる 北九州市における24日朝の路面凍結の原因は、この風の強さが関わっています。北九州市内には気象庁のアメダスポイントが3つあり、24日の雨量(午前9時まで)は1ミリ、最低気温は-1℃ほどです。これだけでも路面が凍るおそれはありますが、地熱などの影響もあり微妙なところ。そこに20メートルを超える冷たい風が吹き込み、路面の熱を奪い凍結したのではないでしょうか。最大瞬間風速は、北九州市で20.6メートル(北九州空港)、すぐ隣の山口県下関市で20.3メートルを観測しています。
風速が20メートルを超えたのは主要地点で「北九州市だけ」だった
気象条件を、福岡県・佐賀県の主要地点と比較してみます。(いずれも24日午前9時までのデータ) 地点:雨量(ミリ)*最も多い地点、最低気温(℃)*最も低い地点、最大瞬間風速(m)*最も強い地点 北九州市:1.0、-0.8、20.6 福岡市:0.5、0.1、17.0 飯塚市:0.5、-1.6、14.3 久留米市:1.0、-2.2、11.4 佐賀市:1.5、-1.2、15.7 雨量が0.5ミリでも路面凍結することはありますので、凍結につながったのは、気温と風速だと思われます。気温が氷点下で、風速が20メートルを超えたのは、北九州市のみでした。路面凍結が多発した要因の一つはこの風の強さだと考えられます。気象台も、北九州地方の風の強さを認識し、「暴風雪警報」を最後まで解除しませんでした。(解除は、九州北部で最も遅かった)
いつもの冬型とは違う「西北西」の風が、“強い風”をもたらした
では、北九州市の風が強くなった要因は何なのでしょうか?ずばり「風向き」と考えられます。よく「九州北部は朝鮮半島の陰になって雪が降りにくい」と言われます。その通り、典型的な冬型になって吹く北西の風の場合、朝鮮半島があるため、その風が海を渡る距離(吹走距離)が短くなり、風速が弱まる傾向です。ところが、今回の寒波では主要な風向きが西北西でした。そうすると、北九州地方に流れ込む風の通り道は、朝鮮半島と済州島の間で、吹走距離が長くなって、強い風が北九州に流れ込むのです。この微妙な風向きの変化が、どこで雪が多くなり、どこで凍結が起こるかに関わってくるのです。