<映画評>ジャッキー・ロビンソンの半生を描いた作品 『42~世界を変えた男~』
近年、メジャーリーグではヤンキース・黒田、イチローなどの日本人選手をはじめ、アジア出身のプレーヤーが多く活躍している。アフリカ系黒人選手や、中南米出身の選手などは、それ以前からベースボール史に残る活躍をみせ、ファンを楽しませている。しかし、かつての「ベースボール」は、白人のために存在していたことをどれだけの人が知っているだろうか? 背番号「42」のユニフォームをまとい、近代メジャーリーグにおける黒人初のプレーヤーとなったジャッキー・ロビンソンを描いた本作品。第二次世界大戦後、「カラーライン」と呼ばれる有色人種への差別がはっきりと残っていたアメリカ。職業野球の世界も同様だった。その「カラーライン」を破らせることを企てたブルックリン・ドジャース(現・ロサンゼルス・ドジャース)のオーナー、ブランチ・リッキーを名優ハリソン・フォード、後に英雄となるも、第一人者としての苦悩を味わったジャッキー・ロビンソンを若手俳優のチャドウィック・ボーズマンが好演する。
ホテル、レストラン、飛行機など、さまざまな公共施設において、黒人の利用が制限された時代。トイレでさえも「白人専用」とされているものも少なくなかった。黒人だけで編成されたニグロリーグから、メジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンでさえも、同じ扱いだった。差別に耐え、苦しみながらも、責務を全うする黒人たちの希望。その希望に対し、ときに大胆な言動でサポートしたオーナー、ブランチ・リッキー。ひたむきにプレーする姿に彼を取り巻く環境は次第に変化していく…。 昨年、ジャッキー・ロビンソンがアメリカ野球殿堂入りを果たして50年となった。半世紀前に殿堂入りした一人の英雄がこじ開けた扉には、多くのプレーヤーが続き、現在のメジャーリーグの発展を支えている。ジャッキー・ロビンソンを演じたボーズマンは、ロビンソンのクセ、気骨あるプレースタイルなどを鮮やかに再現。野球ファンにとって、現代のち密な野球からすれば、少々荒っぽいプレーが散見されるが、それも当時の野球を楽しむ上で、一つの見どころだろう。彼が背負った42番が、メジャーリーグのすべての球団で永久欠番となっている理由は、この作品に集約されている。 ■公開情報 『42~世界を変えた男~』 2013年11月1日(金) 全国公開 ワーナー・ブラザース映画 (c)2013 LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.