「あんなに元気だった子が、なんで…って」練習中に同期選手が急逝…元女子プロレスラー・西脇充子が明かす「22歳で引退を決意した理由」
クラッシュ・ギャルズ(長与千種&ライオネス飛鳥)やダンプ松本を中心とした極悪同盟で、女子プロレスが社会現象と呼ばれる大ブームを起こしていた1985年。西脇充子は、その年に全日本女子プロレス興業(以下、全女)のオーディションに一発合格した。同期は宇野久子(のちの北斗晶)、現役続行の通算キャリアとしては女子マット界最長となる堀田祐美子など、15人もいた。 【写真】練習中に急逝した佐藤真紀さん(享年15)。北斗晶、西脇充子ら新人選手時代の実際の写真や、アイドルレスラー時代にリングで歌う姿。相撲部屋の女将になった西脇の現在の姿も。この記事の写真を見る。 現在は、浅香山部屋の女将さん。親方で夫、元大関・魁皇の浅香山博之さんとともに弟子を育てて、部屋を切り盛りする。美人女将が振り返る、女子プロ黄金期とは。《NumberWebインタビュー全3回の初回》 ◆◆◆ 西脇 いい時代にプロレスをやらせてもらいましたよ。あの時代が、今の私を生かしているって感じ。ひと握りの人しか女子プロレスラーになれない時代でね。私の代で3000人以上の書類審査からオーディションに受かったのは10人。その後の補欠合格で、最終的に同期は15人になったんだけど、どんどん辞めていっちゃうのね。私は5年しか続けなかったけど、短いからこそ「最高の青春時代だった!」と振り返ることができるかもしれないです。本当に貴重な経験をさせてもらいました。今でいうパワハラが当たり前で、その応酬の毎日。足を踏まれても、(後輩の)こっちが「すいません!」って謝る時代で。 ――同期には、北斗さんがいて。 西脇 北斗はもう、新人のときからずば抜けてた。あの子と仲前芽久美(ドリル仲前)は練習生だったんで、「えっ、先輩!?」って思うほど何でもこなせていたし、場慣れしてた。10人の先輩が10発ずつ1人の新人を投げる「百発投げ」っていうのがあったんだけど、受けるこっちはふらっふらになるわけ。それが嫌で、辞めていく子も多かった。最後まで受けきったのが、北斗。私、目の前で見てた。
練習中に急逝…同期だった佐藤真紀さんへの思い
――入団した年の5月、同期の佐藤真紀さんが八丈島合宿中に昏倒して、急逝しました。私が、「女子プロの子」が死ぬことを初めて知った事故でした。 西脇 そうなんだ。真紀ちゃんは2歳年下で、中卒で入ってきたから当時15歳。Aチームで、北斗と同じエリートのできる子だったんだよね。私は、旅(地方巡業)とかにも置いてかれるBチームで、八丈島のときはAチームが練習中に大騒ぎしはじめたから、「なんだ、なんだ?」って。 ――入団間もないから、同期の関係性はそれほど深くなかったのではないですか。 西脇 いや、私は全女の寮で同じ部屋だったの。真紀ちゃんと神崎文枝、私と浅生恭子の4人だったかな。バク転がすごくできる子でね。体操をやってたから。ごはんを食べに出たときに、事務所の前で「バク転見せてー」なんて言ったら、何回でもやってくれるの。あんなに元気だった子が、なんで早く逝っちゃったんだろうっていうショックはありましたけど、でも同じチームだった北斗のほうがつらかったんじゃないかな。 ――同期を失ったことで、プロレスを続けることが怖くなりませんでしたか。 西脇 それはなかった。最期の瞬間を見てないからだと思う。衝撃的ではあるんだけど、現実的ではなかったというか。なんか、テレビの向こうで起こった感じ。お葬式で、みんなで泣いてたのは覚えてる。
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