「小さなネジのズレが、いつの間にか…」“小説SMAP”に鈴木おさむ視点で描かれた、SMAP謝罪放送の1日
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 4月13日(土)、4月20日(土)の放送ゲストは、ベストセラー作家への道を歩んでいる、元放送作家の鈴木おさむさんです。20日(土)の放送では、著書である“小説SMAP”こと『もう明日が待っている』(文藝春秋)にも書かれている、SMAP解散当時の様子などを中心にお話を伺いました。
1972年生まれ、千葉県出身の鈴木さん。19歳で放送作家としてデビューし、それから32年間、さまざまなコンテンツを生み出してきました。 2024年3月末をもって放送作家・脚本家を引退。現在は、「スタートアップファクトリー」を立ち上げ、スタートアップ企業の若者たちの応援を始め、コンサル、講演などもおこなっています。 3月27日(水)に刊行した著書『もう明日が待っている』は、発売2日で累計発行部数15万部を突破。同著の著者印税は、すべて能登半島地震の義援金として寄付されます。 またTOKYO FMでは現在、THE RAMPAGE from EXILE TRIBEのリーダー・陣さんとともに音楽チャートラジオ番組「JUMP UP MELODIES」(毎週金曜13:00~14:55)のパーソナリティもつとめています。
◆『もう明日が待っている』は「僕の目線」で書いた物語
茂木:鈴木さん、アイドルってなんでしょうね? 鈴木:アイドルって、日本特有のものじゃないですか。韓国もBTSが出てきたりしましたけど、やはり他の国にあるのはアーティストで、(アイドルは)日本独特の文化ですよね。 茂木:ということは、『もう明日が待っている』を読むと、日本のことがわかるかもしれないですね。 鈴木:そんな気がします。今回、僕が特に入り口として書きたかったのは、彼ら(SMAP)は91年デビューで、僕が92年に放送作家になっているのですが、そこから94~95年に彼らと知り合いました。 この小説にもけっこう書いたのですが、「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)が1996年4月15日に始まりました。それまでアイドルの人がゴールデンタイム、そしてプライム帯で司会やメインをやることがなかったので、この番組をやる前に僕は、周囲から「絶対に当たらないよ」って言われていたんです。 茂木:それを、鈴木さんが当てたわけですよ。放送業界の“大谷翔平”ですよね。 鈴木:僕の力じゃないんですけどね。大谷翔平は(まさに当時の)SMAPです(笑)。 茂木:『もう明日が待っている』はあくまでも小説ですが、書けること・書けないこと、話せること・話せないことがあったと思います。振り返ると、あのタイミングでのSMAP解散は、何だったのでしょうか? 鈴木:みんなが40代になって、40代中盤を迎えるメンバーもいて、多分この先を考えるじゃないですか。そのうえでの本当に小さいネジのずれが、いろんな人が参加することによっていつの間にか大きくなっていた、みたいなことだと思うんですよね。でもそれは、長年のものでもなく、みたいな。 茂木:そうですか。『もう明日が待っている』の謝罪放送の章は、「文藝春秋」本誌に出たときに拝読しました。小説ですが「こういうことになっていたんだ」って、ものすごく話題になりました。あの1日のことは、やはりかなり濃密な記憶として残っていると思います。 鈴木:覚えています。だから、すごく大事にしたのは、あくまでも“僕の目線”で書くことです。夜中の2時に呼び出されて、そこから「明日、番組冒頭生放送でやるから」「え?」っていうところから始まっていくのですが、最初は「歌を歌うのかな」とか、「中居くん、何か言うのかな」とか思っていたら、どうやらそうではないということとか。 みんなの意見の食い違いがあって、結果、ふたを開けたらあの放送になるまでの過程があって。だから、あんないびつな形になるとは、わかっていないんですね。僕は文章をまとめなければいけない立場だったのですが、そのトーンとかもわからなかったんですよ。 茂木:これは、もともと原稿があって事務所に確認したところ、NGが出たということですね。 鈴木:僕の気持ちとしては、そんなに深々としたことをもはや言わせたくないし、メンバーもその思いだったろうし。だからある意味「今回お騒がせしてすみません」っていうことを言ってしまえば、「同じ文章を少し変えて話す」ぐらいがちょうどいいんじゃないかということで……。 だから、自分のなかではそれがアホな文章だってわかっていますよ。作家として見たら「こいつ実力ないな」ってきっと思うんですよ(笑)。でも、多分そうするのが一番いいだろうと思ったし、メンバーもそれを望んでいたと思うのですが、やはりこの小説で出てくる“ソウギョウケ”としては、「それでは許されない」というのがあって。だから僕の気持ちやメンバーの気持ちもあるんだけど、ソウギョウケのプライドもあるという。 茂木:ですよね。 鈴木:今、芸能界が変わってきていますが、あの当時(2016年)は、今と違って簡単に言うとまだ昔のルールがあったじゃないですか。そのなかでは、やはり「それは許されない」ということがあったので。 茂木:このなかで書かれているのが「組織というのはそういうものだ」と。我々視聴者からは、SMAPのメンバーは、一人ひとり個性が輝いていて素敵な存在に見えたんですけど、でもそのSMAPのメンバーも、また組織というものと無縁ではいられないということですよね。
番組では他にも、著書『もう明日が待っている』出版前の裏話などについて語る場面もありました。 (TOKYO FM「Dream HEART」2024年4月20日(土)放送より)