トヨタとエヌビディア「利益率」が高いのはどっち?比べてわかった歴然の違い
● 自動車メーカーが最先端の半導体を使わない理由 なぜ自動車メーカーは最先端の製品を使わないのか。それにはいくつかの理由があります。 一番に来るのは信頼性と耐久性。クルマは高温、低温、振動、湿気、ほこりなど、極めて劣悪な環境で使われることが前提です。搭載されるデバイスは、それに10年も20年も耐えなければなりません。2~3年で壊れても、笑って済まされるスマホとは大違い。窓が開かなくなっただけでも大騒ぎです。 スマホが壊れることは容認する人も、クルマが壊れるのは絶対に許してくれない。特に安価なクルマのユーザーにこの傾向が強い(ランボやフェラーリが壊れて文句を言う人はあまりいません)。 だから車載半導体は、採用されるのに厳格な認証プロセスを設けています。これをパスするには売り手にも買い手にも相当な手間と時間がかかる。勢い、実績があり、信頼性の高いコンベンショナルな製品を使う、ということになります。 ● ハイエースはいいクルマだよね 偉い方は銀の容器の中にあるカレーのルーを、添えられたスプーンを用いず、いまいましげにドバドバと直接白飯にかけました。それを間髪入れず、わしわしと勢いよく食べ始めます。 「あちちちち……熱い。ちくしょう」 そりゃそうでしょう。供されたばかりのカレーをイッキ食いしたら、熱いに決まっています。額の汗を拭いながら、偉い方は私に尋ねます。 「ところでヤマグチくんは、何に乗っているの?」 「ハイエースです。ディーゼル4駆の寒冷地仕様です」 そう答えると、「うん。あれはいい。いいクルマに乗っているね」と少し機嫌が良くなりました。ハイエースに乗っていることを悪く言う人は、日本に一人もいないでしょう。乗っててよかったハイエース。
● トヨタとエヌビディア、利益率が高いのはどちら? 半導体メーカーの利益率は、特に海外のメーカーは、高い技術力を背景に高い収益性を維持しています。例えばエヌビディアの粗利益率は75.15%。純利益率55.26%です。 世界一の自動車メーカーであるトヨタの粗利益率は20.51%、純利益率が10.96%。この数字を見ると、「実際にモノを造っていない連中が大儲けしているのはケシカラン」と思われるのも、無理がないことかもしれません。 あれ?ご存じありませんでしたか?エヌビディアは自社の工場を持っていないんです。 工場なきメーカー、いわゆる「ファブレス企業」です。全ての製品を外注で造り、自社は開発と設計に集中しています。ついでに言うと、最近エヌビディアの対抗品を出し台頭してきた老舗のAMDも、5Gの通信技術で有名なクアルコムもファブレスです。 もう一つついでに言うと、車載半導体国内の雄として有名なルネサスエレクトロニクスも、最先端の製品は海外のファウンドリーに委託生産しています。国内に生産できる設備がないからです。いや、“生産”どころか試作もアメリカのグローバルファウンドリーに委託しています。一度先端を外部に投げてしまうと、取り戻すのは非常に難しいのです。日本の半導体はどうなるのでしょうね……。 あ、冒頭で「ウチの会社は儲かっている」と豪語しましたが、私の勤務先は日本のデバイスメーカーではありません。「半導体」といっても非常に範囲が広いですからね。 今回の話はほんの出だし。たくさん読まれるようであれば、今後さらに業界のディープな話をしていこうと思います。それではみなさま、ごきげんよう。(フェルディナント・ヤマグチ)
フェルディナント・ヤマグチ