大仁田厚、8年ぶり「バリアフリープロレス」参戦で絶叫「障害を持っている人間でも胸一杯生きている」
◆HERO「HERO40」大会(27日、東京・新木場1stRING) 聴覚障害を持つレスラーも所属する団体「バリアフリープロレスHERO」の大会に「邪道」大仁田厚(66)が8年ぶりに参戦。3人の物故レスラーに捧げるメインイベント「ヤミキ、ワイルド・セブン、ワイルド・シューター追悼試合」でのストリートファイト8人タッグマッチに挑んだ。 「娯楽を享受しにくい障害者に刺激的なエンターテインメントを!」をスローガンに2010年に旗揚げされた同団体。聴覚障害者のため、受付やリング4方向に手話通訳を配置し、リング上でのあいさつやマイクアピールなども手話で説明。会場内には大型スクリーンを設置、字幕をつけ、映像での演出にも力を入れ、視覚障害者向けとして無料でラジオを貸与。実況、解説を流した。 「邪道」の参戦で通常大会の倍の観客が詰めかけた大会のメインイベントで大仁田は「ミスター聾(ろう)プロレス」と称される友龍と友情タッグを結成。最も多くの電流爆破マッチを戦ってきた「怪獣プロレス」の雷神矢口、豊島会長も従え、ワイルド・ベアー、ワイルド・ZERO、ガッツ石島、海和拓弥の4人と激突した。 会場の都合で有刺鉄線こそ使用できなかったが、「オオニター!」という自身のコールが終わった途端、公認凶器のパイプいすを持って場外乱闘に持ち込んだ大仁田。頭突きの連打からのDDT、ギターでの相手の脳天殴打。長机へのパイルドライバーとあらゆる凶器攻撃をすべて披露した。 中盤にはパワーで劣る友龍が相手軍に徹底的に狙われ、竹刀、ギターで思いっきり殴られ、グロッギー寸前に陥ったが、最後は大仁田が相手顔面に緑の毒霧を噴射。一気に主導権を握ると、リング上に設置したドラム缶への大仁田、友龍のWフェイスクラッシャー。大仁田の「友龍、3カウント!」の絶叫のもと、友龍がフォールを奪った。 リング上で肩を抱き合った「邪道」と友龍。マイクを持った大仁田は「ありがとうございました!」とリング四方に向け、まず感謝。 「僕は8年ぶりにこのリングに戻ってきました。このリングがなぜ素敵かと言うと、友龍といい障害を持っている人間でも胸一杯生きているから。障害あったって、この世の中、みんな一生懸命生きているんですよ!」と声を震わせ、絶叫。最後に「ありがとよ! 1、2、3、ファイヤー!」で締めくくった。 同団体は黎明期の新日本プロレスに練習生として在籍しながらも耳にハンディがあったためデビューがかなわなかったヤミキさん(故人)が設立。聴覚障害を持つレスラーが戦う場として10年2月20日、新木場で旗揚げ。新日でデビューできなかったヤミキさんはHEROで念願のプロレスラーになる夢を成就。友龍も旗揚げに参加した。 当初、「聴覚障害者と健常者の架け橋」になるようなプロレスイベントを標榜した同団体だったが、16年、ヤミキさんが急逝。以後、「バリアフリープロレスHERO」に団体名を改め、健常者のプロレスラーも所属。これに伴い、聴覚障害者に限らず、視覚障害者や車イスでの生活を余儀なくされている人を始め一般のプロレスファン、プロレスを見たことがない人も誰でも楽しめるイベント運営に転換。数あるプロレス団体の中、障害者が気軽に楽しめるような配慮をしている唯一無二の団体として知られている。 大仁田は同団体には16年11月5日、新木場での「ヤミキ追悼興行」で初参戦。今回が8年ぶりの参加だった。(中村 健吾)
報知新聞社