日テレ旧本社跡の再開発問題 都計審が付帯決議で一応決着
高級住宅街として知られる東京都千代田区番町地区の日本テレビ本社跡地に超高層ビルを建設する再開発計画に関し、地元住民の賛否が割れて大きな議論となっていた問題(本誌昨年6月2日号既報)で、同区の都市計画審議会(都計審)が3月26日に開かれ、事業の具体化に際して住民融和に向けた真摯な努力などを区に求める付帯決議が賛成多数で可決された。
2月の都計審は再開発計画の採決をめぐり議論が紛糾。計画は賛成多数で可決されたものの付帯決議を行なうことが条件になり、その内容は次回都計審で決めるとされていた。数年来紛糾した問題は、これで一応の決着はみた形だ。 日テレは2003年、番町から港区汐留地区に本社を移転。同社は13年から本格的に跡地利用の検討を開始しだが、18年5月に地域住民も交えて開かれた協議会で配布された同社資料に「新たな高さ制限150メートルまで」との記載があり、これが波紋を呼んだ。 番町地区は地区計画(都市計画法に基づき街の特徴に合うようビルの高さなど細かいルールを地域住民と自治体が話し合って決める制度)で高さ制限は60メートルとされている。「静穏な環境が失われる」と危惧する一部の住民たちは「番町の町並みを守る会」を結成。超高層ビル建設を許可しないことを求める約3300人分の署名を22年2月、区長に提出した。 区は22年7月、日テレの計画案を基にした高さ制限90メートルの地区計画変更案を住民に明らかにした。計画地の広さは約1・2ヘクタールで、日テレは高さ90メートルの賃貸用オフィスビル建設を予定。最寄り駅をバリアフリー化するほか広場を設置し、公共施設を整備する代わりに容積率を緩和して高い建物が建てられる「再開発等促進区」を計画地に適用する内容になっていた。昨年3月の都計審では100人以上の傍聴人が見守る中、2時間以上にわたって審議が行なわれたが、予定されていた計画案の採決は見送られ、審議が継続することになった。 その後、学識経験者や区などが協議し「高さ60メートルの街並みを尊重し、建築物の高さは80メートル以下とする」方向で日テレに再検討を要請。昨年11月に日テレ側が新しい計画案をまとめた。新しい案では賃貸用オフィスビルの高さは80メートルになっている。 新計画案を審議した2月8日の都計審では「採決を見送るべきだ」との意見も出て紛糾したが、最終的な採決の結果は賛成4票、反対5票、付帯決議付きの賛成8票となり、新計画案が可決された。