野村萬斎、伝統芸能からシン・ゴジラまで「多面体となって人間を表現」
野村萬斎も多面体にならないといけない
遊び心と発想力、そして猜疑心――。この理念こそが狂言以外の作品に出演するという仕事に取り組む一つの大きな動機になっている。 「自分の座標軸を常に考えて疑っています。いまは伝統寄りに位置しているという自覚はありますが、日本の古典からシェークスピア、大人向けのエンタメから子ども番組。全方向にベクトルを向けて、根っこから多面体になることが重要。人間を映し出すためには、自身が多面体になっていかなければいけないですからね」 「おかげさまで50歳を過ぎて映画の主演のお話をいただけるなんてありがたいですよね」と語った萬斎さん。本作でも、千利休役の佐藤浩市、織田信長役の中井貴一、豊臣秀吉役の市川猿之助など、重厚感あふれる演者たち相手に、圧倒的な存在感をみせているが、彼らから得るものも大いにあるという。 狂言師という揺るがない軸を持ちながら、さまざまなジャンルで活躍する萬斎さん。 「野村萬斎も多面体になっていかないと、しっかり人間を表現できない」という言葉が、彼の活動の根幹にある考えなのだろう。 (取材・文:磯部正和 撮影:中村好伸) (スタイリスト:中川原寛(CaNN)、ヘアメイク:奥山信次(barrel)) 映画『花戦さ』は6月3日より全国公開 ------------- ■野村萬斎(のむら・まんさい) 1966年4月5日生まれ。東京都出身。人間国宝の祖父・故六世野村万蔵と父・万作に師事し、3歳で初舞台を踏む。2002年には、世田谷パブリックシアターの芸術監督に就任するなど芸術の普及に貢献している。また1997年放送の連続テレビ小説「あぐり」や、『陰陽師』シリーズ(01,03年)、『のぼうの城』(12年)、『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』(16年)などに出演し存在感を発揮している。