商品先物取引の勧誘が6月から規制緩和へ ── 先物取引業界の課題とは?
金や原油などの工業品、大豆やトウモロコシなどの食料品の将来の価格を予測して取引する「商品先物取引」の勧誘規制が、今年6月から緩和される。商品先物取引の現状とこれからの課題とは?
取引規模の縮小が続く商品先物取引業界
今回の規制緩和は、取引量が減っている商品先物市場の活性化の観点から行われた。商品先物取引は、商社などの当業者だけではなく、資産運用の一環として一般投資家も参加できるハイリスク・ハイリターンの商品。内閣府消費者委員会などからは反対の声があったが、65歳未満で年収800万円以上もしくは金融資産2000万円以上、あるいは弁護士などの専門資格保持者の条件を満たす人のみなどと勧誘対象の条件を絞り込むことでクリアした。 取引規模の減少は、業界にとって大きな課題となっている。1989年1月には、東京や大阪には複数の商品取引所があった。横浜、名古屋、神戸、札幌といった大都市だけではなく、前橋、豊橋、下関にもあった。しかし、今は「東京商品取引所」と「大阪堂島商品取引所」の2つに集約されている。取引量は、2003年には出来高が1億5410万枚だったのが、2013年には2720万枚へと激減。2003年には1万4894人いた外務員が、2013年には2308人とこちらも大きく減っている。 業者の数を見てみても、2004年3月には97社あったのが、2014年3月には32社にまで減少している。名古屋証券取引所2部に上場していた「グローバリー」は2005年に経済産業省と農林水産省に業務改善命令を出され、顧客の証拠金を返還しないなどの法令違反が発覚し、営業停止が続き、商品先物業務を停止。それにともなって上場が廃止された。東京証券取引所1部に上場している「小林洋行」は、かつては最大手だったが、いまではグループ会社の経営管理と不動産賃貸業を中心にし、先物取引は子会社の「フジトミ」(JASDAQ上場)が行っている。
苦い過去と業界のこれから
さらに業界には苦い過去がある。強引な営業と勧誘が問題になった。「勧められるまま白金の先物取引を繰り返して、気がついたら損害が発生していた。返金してほしい」「金の先物取引を執拗に勧められ、何度か断った末に契約したが、損失が出て、やめたいと言ってもやめさせてくれない」といった苦情が各地の消費者センターに寄せられた。